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マーケターのスキルマップの作り方|「何ができれば一人前か」を職歴や資格ではなく行動で決める

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目次

マーケのメンバーを採用したり配置したりしても、「何ができれば一人前か」の基準がないため、任せてよいかの判断がその場の印象になることがあります。必要なのは、職歴や資格ではなく、仕事の中での行動で力を測る基準です。

この記事では、役割ごとに一人前の線を引くスキルマップの作り方を、記入例とあわせて解説します。

👉この記事でわかること
  • マーケターのスキルを「5つの領域 × 4段階」で書き出すスキルマップの形
  • 職歴・研修・資格だけで力を判断してはいけない理由と、代わりに確かめること
  • スキルマップを作り、本人と話し、見直すまでの5つの手順

育成計画の全体の進め方は、マーケティング人材育成は『任せる順番』から|経験者が自分1人のチームで、1年で実務を手放す計画 で解説しています。

結論:スキルマップは「行動」で書き、一人前の線を役割ごとに引く

スキルマップは、縦に「必要なスキル」、横に「レベル」を並べた表です。マーケターのスキルマップで大切なのは、ツール名や資格名ではなく、「何を説明できるか」「どう判断し、どう動けるか」という行動で項目を書くことです。

代表的な項目を挙げると、次のようになります。自社の商材や役割に合わせて、足したり削ったりして使ってください。

領域スキル項目の例(行動で書く)
顧客理解・企画営業への同行や顧客の声から、顧客が抱える課題を言葉にできる
顧客理解・企画顧客が情報を集め、比べ、社内で決めるまでの流れを整理できる
顧客理解・企画狙う顧客(業種・規模・役職など)を、根拠をもって絞り込める
顧客理解・企画競合と比べた自社の強みを、顧客が使う言葉で説明できる
施策の実行施策の目的と成果を測る指標を決め、それに合う手段を選べる
施策の実行外注先に目的と条件を伝え、期待どおりの成果物を受け取れる
施策の実行公開前に、問い合わせなどの計測が正しく動くかを確かめられる
分析・判断施策の前に仮説を立て、結果と比べて検証できる
分析・判断根拠を添えて、客観的に意見を言える
分析・判断問題が起きたとき、対処案を持って相談できる
改善・学習作業の手間を減らす方法を考え、試せる
改善・学習成功・失敗の事例を集め、定期的に更新している
改善・学習社内で当たり前になっているやり方を疑い、見直しを提案できる
仕事の進め方営業や経理など他部署と、目的と条件をすり合わせて調整できる
仕事の進め方期限に影響する作業を把握し、遅れそうなときは早めに相談できる

「仕事の進め方」は、マーケの専門スキルではありません。ただ、専任者が少ない部署では、営業や経理と調整できるかどうかで、施策が進むかどうかが決まります。そのため、スキルマップに入れておきます。

レベルは、次の4段階で決めます。

レベル状態
1指示と手順書があればできる
2決まった範囲の仕事を、一人でできる
3理由を説明でき、根拠をもって提案できる。問題が起きたら対処案を持って相談できる(一人前)
4他の人に教えられ、やり方そのものを見直せる

レベル2と3の間に、一人前かどうかの線があります。作業ができるだけでなく、なぜそうするのかを説明し、根拠をもって次の手を出せるか。この差を見分けられるように作ることが、スキルマップの目的です。

全体の流れ

スキルマップは、次の5つの手順で作ります。

  1. 役割を決める
  2. 4つの領域で、スキル項目を洗い出す
  3. 項目を「行動」の言葉に書き直す
  4. 役割ごとに、一人前のレベルを決める
  5. 本人と上司で付け、差を話し、3か月ごとに見直す

スキルマップを作る5つの手順

ステップ1:役割を決める

最初に、マーケの仕事をいくつの役割に分けるかを決めます。いまいるメンバーに合わせるのではなく、必要な仕事から役割を決めるのが順番です。人に合わせて役割を作ると、その人が抜けたときに何が足りなくなるかが見えません。

2〜5名くらいのマーケ部署なら、次の3つに分けると整理しやすくなります。

役割主な仕事
施策運用担当広告、Webサイトの更新、メール配信、CRMやMAの運用
コンテンツ担当記事、営業資料、事例、セミナーの企画と制作
分析・企画担当数字の集計と分析、施策の企画、月次の報告

1人で2つ以上の役割を持つ場合も、役割は分けたままにします。そのうえで、「この人は施策運用担当とコンテンツ担当を兼ねる」と割り当てます。

ステップ2:4つの領域で、スキル項目を洗い出す

次に、スキル項目を洗い出します。思いつくままに並べると、ツールの名前ばかりになりがちです。そこで、次の5つの領域に分けて考えます。

領域見ること
顧客理解・企画自社の目線ではなく、顧客の立場で考えられるか
施策の実行目的に合った手段を選び、外注先も含めて形にできるか
分析・判断仮説と根拠をもって判断し、問題に対処できるか
改善・学習やり方を見直し、知識を更新し続けられるか
仕事の進め方他部署と調整し、期限を守って進められるか

項目の数は、全体で15くらいを目安にします。多すぎると、付けるのに時間がかかり、誰も更新しなくなるためです。1人分を短い時間で付けられる量に絞ることが、使い続けるための条件になります。

📌参考:20秒ルール

心理学者ショーン・エイカーは、著書『幸福優位7つの法則』で、行動を始めるまでの手間が20秒違うだけで、続くかどうかが変わると紹介しています。
エイカー自身、クローゼットからギターを出す20秒が面倒で練習が続かず、リビングにギタースタンドを置いたら続くようになったそうです。スキルマップも同じで、付ける手間が小さいほど、見直しが続きます。

とくに「顧客理解・企画」は外さないでください。顧客が何に困っていて、どう情報を集め、どう決めるのか。これを顧客の立場で考えられるかどうかは、どの役割にも共通して求められる力です。

ステップ3:項目を「行動」の言葉に書き直す

洗い出した項目を、観察できる行動の言葉に書き直します。ここが、スキルマップが使えるものになるかどうかの分かれ目です。

次の表は、書き直し方の例です。

書き直す前書き直したあと
アクセス解析ができる問い合わせが減ったとき、原因の候補を挙げ、確かめる順番を示せる
広告運用ができる広告の成果が落ちたとき、対処案を持って相談できる
Webサイトが作れるページの構成を、なぜその順番にしたのか説明できる
進行管理ができる期限に影響する作業を把握し、遅れそうなときは早めに相談できる
企画力がある企画の理由を、顧客の課題と数字の両方で説明できる

書き直すときの基準は、上司が見て「できている・できていない」を判断できるかどうかです。「使える」「理解している」のままだと、人によって判断が分かれます。

ステップ4:役割ごとに、一人前のレベルを決める

項目と役割がそろったら、役割ごとに「一人前ならレベルいくつか」を決めます。すべての項目をレベル3にする必要はありません。役割によって濃淡をつけます。

スキル項目施策運用担当コンテンツ担当分析・企画担当
顧客が情報を集め、比べ、社内で決めるまでの流れを整理できる233
公開前に、問い合わせなどの計測が正しく動くかを確かめられる323
施策の前に仮説を立て、結果と比べて検証できる223

ただし、次の2つはどの役割でもレベル3を求めます。

  • 根拠を添えて、客観的に意見を言える
  • 問題が起きたとき、対処案を持って相談できる

「私はこれがいいと思ったので」という説明では、上司も経営陣も判断できません。何を根拠にそう考えたのかを、数字や顧客の反応で示せることが一人前の条件です。問題が起きたときも同じで、「エラーが出ました」という報告で止まらず、「原因はこれが考えられ、対処案はAとBです」まで出せれば、報告の時間を飛ばして、すぐに相談へ進めます。

ステップ5:本人と上司で付け、差を話し、定期的に見直す

スキルマップができたら、本人と上司がそれぞれ別にレベルを付けます。点数そのものより、本人と上司で付けたレベルに差がある項目が大切です。差がある項目について、「どんな場面を見てそう判断したか」を話すと、次の見直しまでに何をすればよいかが具体的になります。

📌参考:厚生労働省「職業能力評価基準」

仕事に必要な能力を職種ごとに整理した、国の基準です。営業・マーケティングの職務も含まれ、レベルは4段階に分かれています。
評価シートでは本人、上司の順に○△×で評価し、評価が違う項目は上司が具体例を示して理由を伝えます。項目を自社に合わせて変えて使えるので、一から考えるのが難しい場合の参考になります。

見直しの時期は、会社の評価面談や育成計画の区切りに合わせて、定期的に行います。レベルを付け直すだけでなく、項目そのものも見直します。マーケの手法やツールは変わりやすく、以前は正しかったやり方が合わなくなることもあるためです。見つけた定石も、定期的に疑う前提で運用します。

レベル3に届くまでには、時間がかかります。1回の見直しで上がらなくても、本人と上司の差が縮まっているかを見ながら、根気よく続けてください。

スキルマップ作成でつまずきやすい点

職歴・研修・資格で、レベルを決めてしまう

採用や配置のときにとくに多いのが、経歴の言葉だけでレベルを決めてしまう失敗です。同じ経歴でも、実際にできることは人によって大きく違います。

経歴見落としやすいこと確かめること
Webプロデューサー・ディレクターの経験がある進め方が案件ごとに大きく違う。ツールや専門用語に慣れていない人や、進行表を使わずに都度の連絡で進めてきた人もいる実際に使っていた進行表を見せてもらう。最近の業界の変化を1つ説明してもらう
Web制作のスクールや公的職業訓練を修了している学ぶのは主に作り方で、なぜその構成にするのかを考える機会は少ないことがある作ったページの構成の理由を説明してもらう
Googleアナリティクス認定資格や、Google 広告・LINEヤフー広告の認定資格を持っている試験で確かめるのは、主に機能や設定の知識。実際の数字から改善策を組み立てた経験とは別実際の数字を見せ、改善案を1つ出しても

たとえば、決まった取引先から継続して依頼を受ける仕事が中心だった場合、進め方がその取引先に合わせて固まっていることがあります。職種の名前が同じでも、経験してきた仕事の中身は違うと考えておくほうが安全です。

経歴は、「どの項目から確かめるか」を決める手がかりとして使います。レベルは、実際の行動を見てから付けてください。

項目を増やしすぎて、更新されなくなる

「あれも必要、これも必要」と項目を足していくと、1人分を付けるのに長い時間がかかる表になります。そうなると、定期的な見直しは続きません。15くらいを目安に、増えてきたら似た項目をまとめるか、役割に関係の薄い項目を外します。

作ったまま、見直さない

一度作ったスキルマップを何年も使い続けると、いまの仕事に合わない項目が残ります。その結果、レベルは高いのに成果が出ない、というずれが生まれます。項目の見直しは、レベルの付け直しとセットで行ってください。

スキルマップの記入例

本人と上司が付けるシートは、次の形にします。数値と内容は説明用の架空の例です。

施策運用担当・入社2年目のメンバーの例(抜粋)

領域スキル項目一人前の線本人上司次の見直しまでにやること
顧客理解・企画顧客が情報を集め、比べ、社内で決めるまでの流れを整理できる221営業に同行し、受注した顧客が比べた会社と決め手を聞く
施策の実行公開前に、問い合わせなどの計測が正しく動くかを確かめられる333―
分析・判断根拠を添えて、客観的に意見を言える332提案のたびに、根拠となる数字か顧客の声を1つ添える
分析・判断問題が起きたとき、対処案を持って相談できる322異常があったときは、対処案を2つ持って相談する
改善・学習作業の手間を減らす方法を考え、試せる323月次の集計作業を減らす方法を1つ試す
仕事の進め方期限に影響する作業を把握し、遅れそうなときは早めに相談できる332次の施策で、期限に影響する作業を最初に上司と確認する

本人と上司の差がある「顧客の検討の流れ」「客観的な意見」「期限の管理」の3項目が、次の面談で話すテーマになります。反対に、「作業の手間を減らす」は上司のほうが高く付けています。本人が気づいていない強みとして伝えると、次の行動につながります。

📌OKRで目標を管理している会社なら、「次の見直しまでにやること」を個人のOKRの成果指標(Key Results)として置くこともできます。その場合も、スキルマップのレベルとOKRの達成度は分けて扱い、OKRの達成度をそのまま評価に使わないようにします。

人事や採用担当に伝えるときの一文

スキルマップは、評価や採用で人事と話すときにも使えます。

  • 評価の基準として:「マーケのメンバーは、経歴ではなく、根拠をもって提案できるか、問題に対処案を出せるかといった15の行動で評価しています。一人前の線はレベル3です。」
  • 募集要項に書くとき:「経験年数や資格よりも、施策の結果を根拠をもって説明し、次の打ち手を提案できる方を求めています。」

まとめ

  • マーケターのスキルマップは、ツール名や資格名ではなく、行動の言葉で項目を書きます。
  • 領域は、顧客理解・企画、施策の実行、分析・判断、改善・学習、仕事の進め方の5つに分け、全体で15くらいに収めます。
  • 一人前の線はレベル3です。どの役割でも、「根拠を添えて客観的に意見を言える」「対処案を持って相談できる」はレベル3を求めます。
  • 職歴・研修・資格は、確かめる項目の手がかりにとどめ、レベルは実際の行動を見て付けます。
  • 本人と上司の差を話し、評価や育成の区切りに合わせて、項目ごと定期的に見直します。育成には時間がかかる前提で、根気よく続けます。

よくある質問

Q1.マーケターに必要なスキルは、何から身につけさせればよいですか?

A1.まずは「根拠を添えて客観的に意見を言える」「問題が起きたとき、対処案を持って相談できる」の2つです。この2つはどの役割でも一人前の条件になり、ツールの操作よりも身につくまでに時間がかかります。ツールの操作は、担当する施策が決まってから覚えれば間に合います。

Q2.スキルマップのレベルは、何段階にすればよいですか?

A2.4段階をおすすめします。3段階だと「一人でできる」と「根拠をもって提案できる」の差が見えにくく、5段階以上だと付ける人によって判断がぶれやすくなるためです。4段階なら、レベル2と3の間に一人前の線を引けます。

Q3.Webディレクターの経験者なら、マーケの仕事も任せられますか?

A3.経験だけでは判断できません。ツールの操作や専門用語、WBSでの進行管理に慣れていない人もいるためです。実際に使っていた進行表を見せてもらう、作ったものの理由を説明してもらうなど、行動で確かめてからレベルを付けてください。

Q4.GA4や広告の資格は、スキルマップでどう扱えばよいですか?

A4.資格があることは、レベルの根拠にしません。資格で身につくのは主に設定や計測の知識で、数字を見て改善案を出せるかは別の力だからです。実際の数字を見せて改善案を出してもらい、その内容でレベルを付けます。

Q5.スキルマップは、どのくらいの頻度で見直せばよいですか?

A5.3か月ごとが目安です。レベルを付け直すだけでなく、項目がいまの仕事に合っているかも見直してください。マーケの手法やツールは変わりやすいので、一度作った項目も定期的に疑う前提で運用します。

この記事の執筆者

coconeco
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デジタルマーケティング立ち上げ・運用設計責任者

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