BtoBマーケの評価軸は「リード数」から「CAC」へ|2026年の変化と、経営に通る報告の形
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リード獲得単価の上昇に伴い、BtoBマーケの評価軸は件数から「CPAと投資回収期間」へと変化しました。リード数の報告だけでは問われる「投資対効果」に答えられません。
この記事では、経営層から高く評価されるこれからの報告手法を解説します。
- マーケの評価が「リード数」から「受注1社の獲得費用と回収期間」に移っている理由
- 安いリードほど、受注1社の費用が高くなることがある理由
- マーケ施策の管理方法と、経営への報告書の形
報告したいのは、マーケ施策への投資でいくら利益がでるか?
経営がマーケの報告で確かめたいのは、使ったお金が利益になるかどうかです。そのため、受注1社をいくらで獲ったか(獲得費用)と、そのお金を何か月で取り返せるか(回収期間)が問われます。
経営が求めるのは「利益への最短ルート」
経営会議で最後に問われるのは利益です。リード数は、利益までの距離がいちばん遠い数字です。商談化率や受注率が変われば、同じ100件でも生む利益はまったく違います。件数だけを報告していると、「この予算でいくら利益が出るのか」という問いに、計算の道筋を示せません。
「安く大量」から「決裁者へ確実に」届ける時代へ
実際の調査データを見ても、マーケティングの重視される指標が変化していることがわかります。
- 決裁者へのアプローチ実感:「十分にある」はわずか 9.7%
- 今後重視したい指標:「ターゲット層の濃さ(43.7%)」が「獲得単価(35.9%)」を逆転
- 営業側の不満:「リードの品質が低い(32.6%)」、「リードが放置されている(25.2%)」
ただ量を集めても、質の低いリードは営業に放置され、無駄なコストになってしまいます。
ただし、件数が要らなくなったわけではありません。2026年の別の調査では、「量」を重視したい企業(42.1%)が「質」を重視したい企業(21.4%)を上回りました。
実は、CPLが安い施策ほど、受注1社の費用は高くなることがある
施策の良し悪しは、CPLではなく、ユニットエコノミクス(受注1社あたりの採算)で判断します。CPLが安い施策でも、CACで比べると評価が逆転することがあるためです。
例:展示会とリスティング広告を比較する
次の前提で考えます。
- 新規顧客1社の年間粗利:100万円
- CACの上限:獲得費用を1年で回収する方針のため、1社あたり100万円まで
- 比較する施策:展示会とリスティング広告(実績は下表のとおり)
| 展示会 | リスティング広告 | |
|---|---|---|
| 投資額 | 280万円 | 240万円 |
| リード数 | 120件 | 50件 |
| 受注数 | 3社 | 3社 |
| CPL | 2.3万円 | 4.8万円 |
| CAC | 93万円 | 80万円 |
CPLは、展示会がリスティング広告の半分以下です。しかし受注数はどちらも3社のため、CACは展示会のほうが13万円高くなります。
差を生むのは「受注1社に必要なリード数」
展示会は名刺交換によって多くのリードを獲得できる一方、商談・受注への転換率が低い傾向があります。その結果、受注1社に必要なリード数に大きな差が生じます。
- 展示会:商談化率10%・受注率25% → 受注1社に40件
- リスティング広告:商談化率20%・受注率30% → 受注1社に約17件
許容CPLは「CACの上限÷受注1社に必要なリード数」で決まる
CACの上限を受注1社に必要なリード数で割ると、リード1件あたりに許容できる費用(許容CPL)が求められます。
| 展示会 | リスティング広告 | |
|---|---|---|
| 許容CPL | 2.5万円(100万円÷40件) | 6.0万円(100万円÷約17件) |
| 実績CPL | 2.3万円 | 4.8万円 |
| 許容CPLとの差 | 0.2万円 | 1.2万円 |
展示会は許容CPLとの差がわずかで、商談化率が少し下がるだけで採算が合わなくなります。施策の評価は、CPLの低さではなくCACで行いましょう。
KPIツリーの各段に「許容単価」と「判定」を書き足して管理する

ユニットエコノミクスを追うために、新しい管理表を作る必要はありません。今のKPIツリーの各段に「実績単価」「許容単価」「判定」を書き足せば、どの段で採算が崩れているかを日常的に確認できます。
関連記事:KPIツリーの作り方と例|作って終わりにしない、運用に生かせるツリーの設計のしかた
展示会のKPIツリーの例
ツリーの頂点には、投資額とCAC、回収期間を書きます。
- 投資額:280万円
- CAC:93万円(280万円÷3社)
- 回収期間:約11か月(93万円÷月次粗利8.3万円)
各段には、件数の横に3項目を書き足します。
| 段 | 件数 | 実績単価 | 許容単価 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 受注 | 3社 | CAC 93万円 | 100万円 | △ |
| 商談 | 12件 | 商談単価 23万円 | 25万円 | △ |
| リード | 120件 | CPL 2.3万円 | 2.5万円 | △ |
許容単価は、上の段から転換率を掛けて出す
- 受注:CACの上限 = 年間粗利100万円 × 回収年数1年 = 100万円
- 商談:100万円 × 受注率25% = 25万円
- リード:25万円 × 商談化率10% = 2.5万円
転換率には施策別の実績を使います。実績が少ない施策は全体平均で仮置きし、仮置きであることをツリーに明記します。
判定を見れば、手を打つ段がわかる
判定は、実績単価が許容単価の何割かで付けます。
- ○:許容単価の9割以下
- △:9割を超え、許容単価以内
- ×:許容単価を超過
展示会は全段が△です。転換率がわずかに下がるだけで×に変わるため、次期の予算配分で注視すべき施策だとわかります。
×が付いたときは、どの段かで打ち手が変わります。
- リードが×、商談は○:獲得コストが高い。出展条件や出稿単価を見直す
- リードは○、商談が×:商談化率が低い。ターゲティングやナーチャリングを見直す
- 商談までは○、受注が×:受注率が低い。営業と商談の質を確認する
経営への報告書は、施策別のCACと回収期間を1枚にまとめる

KPIツリーはチームで運用を管理するためのもの、報告書は経営が投資判断をするためのものです。経営には、施策ごとのCAC・回収期間・判定を1枚にまとめて報告します。
結論:展示会とリスティング広告に520万円を投資し、6社を受注。CACは87万円で上限100万円の内側、約10か月で回収できる見込みです。
| 施策 | 投資額 | リード数 | 受注数 | CAC | 回収期間 | 判定 | 次の打ち手 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 展示会 | 280万円 | 120件 | 3社 | 93万円 | 約11か月 | △ | 出展後フォローを見直し、商談化率を上げる |
| リスティング広告 | 240万円 | 50件 | 3社 | 80万円 | 約10か月 | ○ | 来期の増額候補とする |
| 合計 | 520万円 | 170件 | 6社 | 87万円 | 約10か月 | ○ |
報告書で押さえる3つのポイント
- 結論を1文で先に書く:投資額、受注数、CAC、上限の内か外か、回収期間をまとめて示します。経営が最初に知りたいのは「この投資は回収できるか」です
- リード数の列は残す:前期と比較できるようにするためです。切り替えの数か月は、リード数とCACを並べて報告します
- 判定ごとに次の打ち手を書く:△や×には、どの段の何を変えるかを1行で添えます。KPIツリーで×になった段が、そのまま打ち手の根拠になります
CACを出すには、営業との定義合わせが前提になる
施策別のCACは、施策ごとの商談数と受注数がないと算出できません。何を「商談」と数えるか(初回面談か、見積もり提出か)を営業と先に揃え、リードの流入元を受注まで追えるようにしておきましょう。
経営や営業に説明するときの一文
- 経営へ:「展示会とリスティング広告に520万円を使い、6社を受注しました。1社あたりの獲得費用は87万円で、1社の年間粗利100万円から1年以内に回収できます。今後は、施策を続けるかどうかを、この1社あたりの費用で判断させてください。」
- 営業へ:「施策の評価を、リード数から受注1社あたりの費用に切り替えます。そのために、どのリードが商談・受注になったかを一緒に記録させてください。」
まとめ
- マーケの評価は、リード数から「受注1社の獲得費用と回収期間」に移っています。
- CPLが安い施策ほど、CACは高くなることがあります。施策はユニットエコノミクスで比較しましょう。
- 今のKPIツリーに許容単価と判定を書き足し、経営には施策別のCACと回収期間を1枚で報告します。
よくある質問
Q1. リード数の目標は、もう不要ですか?
A1. 不要ではありません。受注目標から必要なリード数を逆算する土台なので、KPIツリーにも報告書にも残します。そのうえで、許容CPLと並べて採算を確認します。
Q2. KPIツリーがまだありません。
A2. 先に、受注目標から商談数・リード数を逆算したツリーを作ります。作り方は【B-01:KPIツリーの作り方】で解説しています。許容単価と判定は、ツリーができてから書き足せば十分です。
Q3. 施策別の転換率を出せるほど、データがたまっていません。
A3. 全施策の平均で仮置きし、仮置きであることをツリーと報告書に明記します。受注データがたまった段階で、施策別の実績に置き換えます。
Q4. 「LTV/CACは3倍以上」「回収期間は12か月以内」という目安は使えますか?
A4. いずれもSaaSなど月額課金のビジネスで広まった目安のため、そのままは使いません。受注まで数か月かかるBtoBでは、成果が出始めた施策まで止めてしまうことがあるからです。CACの上限は、「何年で回収するか」を経営と合意して決めます。
Q5. CACに人件費は含めますか?
A5. 経営への報告では、外部に支払う費用(広告費・出展費など)で出したCACと、人件費を含めたCACを別の行で示し、合計も添えます。人件費の算出方法は会社ごとに異なるため、経理・財務に確認してから使いましょう。
