RFM分析とABC分析で「どの顧客が何を買っているか」をつかむ
coconecoLead Manager公開日: / 更新日:
目次
既存顧客の受注データを分析しても、ランク分けの表ができたところで止まり、経営や営業の判断に使われないことがあります。求められているのは、顧客と商品の両方から「誰が何を買っているか」をつかみ、相手ごとに決めてほしいことへ変えて伝えることです。
この記事では、RFM分析とABC分析の結果を組み合わせて読み、経営・営業・メンバーを動かすまでの進め方を紹介します。
- RFM分析とABC分析を組み合わせると見える、顧客と商品の組み合わせ
- 分析の結果を、経営・営業・メンバーにそれぞれ何として伝えるか
- 受注データがそろっていないときに、先に用意すること
フレームワークを使う順番の全体は、BtoBマーケティング戦略の立て方|顧客の声からフレームワークを使う順番 で紹介しています。
RFM分析とABC分析を組み合わせ、「どの顧客が、どの商品を買っているか」を確かめる
既存顧客の分析は、RFM分析で顧客を、ABC分析で商品をランク分けし、2つを組み合わせて読みます。片方だけでは、判断を誤ることがあるためです。
RFM分析だけでは大事な顧客はわかっても、その顧客に何を売ればよいかがわかりません。一方、ABC分析だけでは売れている商品は分かっても、誰がその売上を支えているかが追えなくなります。たとえば、ABC分析で売上の小さい商品を減らすと決めたとき、その商品を上位の顧客が一緒に買っていれば、取引全体が細ってしまうケースも少なくありません。
この記事では、顧客を次の3つに分けて呼ぶことにします。
- 取引額が大きく取引が続いている「上位顧客」
- 以前は取引が多かったのに最近の受注が途絶えている「離れかけの顧客」
- 取引が始まって間もない「新しい顧客」
組み合わせて読むと、次のことがわかります。
| 顧客と商品の組み合わせ | 分かること・分析の視点 |
|---|---|
| 上位顧客 × 売上の大きい商品(A) | 売上の柱になっているメインの組み合わせ |
| 売上の大きい商品(A)× 買っている顧客数 | 柱の商品が特定顧客(少数の顧客)に依存していないか |
| 上位顧客 × 売上の小さい商品(C) | 売上は小さくても上位顧客を繋ぎ止めている商品 |
| 新しい顧客 × 最初に買った商品 | 取引の入口(フック)になっている商品 |
| 離れかけの顧客 × 以前買っていた商品 | どの商品から取引が細ったかの手がかり |
| 上位顧客 × まだ買っていない商品 | 次に提案できるクロスセル・アップセルの候補 |
組み合わせを見る前は、社内の見方がそろっていないことも珍しくありません。営業は「主力はこの商品」、古くからいる社員は「長年の付き合いの顧客が大事」と、部署や社歴によって捉え方が割れがちだからです。受注データは、どの見方が実態に近いかを確かめる共通の材料になります。
受注データがそろっているかを確かめる
分析に使うのは、顧客名・受注日・金額・商品名の4つを数年分です。項目は少なくても、そのまま分析に使えるデータはあまりありません。
顧客名の略称・正式名の混在、グループ会社や事業所ごとの分断、年度による商品名の表記変更など、データのズレが起きるためです。
特に、営業の受注データと経理の請求データは合計が合わないことがあります。経営に見せた際に手元の数字とズレていると分析結果のすべてが疑われるので、どちらを正とするかは分析の前に経理と決めておきます。
データがなければ、記録の仕組みと予算を用意する
受注データがまとまっていないなら、分析より先に記録の仕組みを作ります。受注と商談は、CRM/SFAに記録するのが基本です。グラフや表を毎回作る手間を減らすなら、BIツールもあると楽になります。
ただし、顧客の数が多くなく、受注が月に数件なら、Excelで十分始められます。ツールの導入は、Excelでの集計が回らなくなってから考えても遅くありません。
予算が要るときは、稟議にかけます。稟議の理由は、「経営が見たい数字を出せない」にします。売上への貢献やROIを数字で示せないと、マーケの予算そのものが通りにくくなりがちです。数字を出せる仕組みへの投資として説明すると、決裁者は判断しやすくなります。営業に入力を頼む項目は、受注日・金額・商品名などに絞ります。
稟議に書く根拠の組み立て方は、予算の根拠はどう説明する?決裁者が見る「なぜ今・なぜこの額・なぜこの施策」の組み立て方 が参考になります。
経営には、顧客と商品の組み合わせから「どこに投資し、何を残すか」を決めてもらう
経営に見せるのは、決めてほしいことです。経営は時間を取りにくいので、分析の表は添えるだけにし、組み合わせから読めたことと、判断してほしいことを1枚にまとめます。
伝える中身は、次の5つです。
1.売上の柱になっている組み合わせに、狙う顧客と予算を寄せる
上位顧客がA商品を買っている組み合わせは、自社が勝てている場所です。その顧客の共通点を、業種・規模に加え、どの部署がどんな場面で使っているかまで言葉にします。共通点がわかれば、似た会社を新しく狙う顧客として示し、マーケの予算を寄せる根拠にできます。
経営に決めてもらうのは、狙う顧客をそこに絞るかどうかです。絞り直すときは、B2Bのセグメンテーション|業種×規模×地域で市場を区切る方法 の手順で、業種や規模の切り口と照らし合わせます。
2.柱の商品が少数の顧客に頼っているなら、リスクとして示す
A商品の売上の大半を特定数社が占める状況は、業績が好調なときほど見落とされかねません。上位1社が離脱した場合の減収幅を試算し、客観的なリスクとして提示。
この数値は、「現在の売上を防衛する」という新規開拓予算を通す強固な理由になります。
3.売上の小さい商品でも、上位顧客が買っているなら残す材料を渡す
ABC分析だけではC商品は廃止候補になりがちですが、上位顧客が主力商品と併せて買っている場合、撤退が他社への乗り換えを引き起こすリスクがあります。
上位顧客のうち何社がその商品を買っているかを数字で示し、製品の担当部署と経営が判断するための材料として渡します。
4.取引の入口になっている商品に、訴求とリード獲得を寄せる
新しい顧客が最初に買った商品は、取引の入口です。入口の商品がC商品であることもあります。売上は小さくても、新しい顧客を連れてくる役割があるなら、マーケの訴求とリード獲得の中心に置きます。
売上の大きい商品だけに予算が偏るのを防ぎ、新規獲得に必要な場所へ狙い通りに予算を配分する根拠になります。
5.顧客の移り変わりを、定期報告で続けて見せる
分析の結果は、四半期ごとなど、決まった報告の場で更新します。見るのは、新しい顧客が上位顧客に育ったか、上位顧客が離れかけに移っていないか、という顧客の移り変わりです。
一度きりの報告では、打ち手が効いたかがわかりません。移り変わりを続けて見せると、どの打ち手に予算を使い続けるかを、経営と同じ数字で話せます。
営業には、担当顧客ごとに「次に提案する商品」と「声をかける顧客」を渡す
営業に渡すのは、担当顧客ごとに「次に提案する商品」と「声をかける顧客」をまとめた一覧です。上位顧客には、まだ買っていない商品を、次に提案する商品として示します。離れかけの顧客には、以前買っていた商品を添えて示します。
離れかけの顧客すべてに営業が声をかけるのは、負担が大きくなります。先にマーケから、以前買っていた商品に関わる新製品の案内や事例をメールで送り、開封やサイトの閲覧などの反応があった顧客だけを営業に渡すなどすれば、営業は、反応があった顧客から声をかけられます。
渡す前に、結果を営業の個人の評価には使わないと伝えておきます。担当顧客のランクは、営業から見ると自分の成績表に見えるためです。営業の肌感と結果がずれたときは、どちらが正しいかを決める前に、一緒に理由を確かめます。取引額は小さくても、紹介を多くくれる顧客のように、データに出ない価値が見つかることもあります。
メンバーへの指示は、組み合わせごとに施策と追う数字を分けて出す
メンバーには、顧客と商品の組み合わせごとに、任せる施策と追う数字を分けて指示します。ランク分けまでで止まると、どの顧客にも同じメールや記事を届け続けることになるためです。
組み合わせごとの指示は、次のように分けます。
| 組み合わせ | メンバーに任せる施策 | 追う数字 |
|---|---|---|
| 上位顧客 × A商品 | 話を聞いて事例にし、似た会社に届ける | 似た会社からのリード数 |
| 新しい顧客 × 入口の商品 | 入口の商品の訴求とコンテンツを作る | 入口の商品からの商談数 |
| 上位顧客 × まだ買っていない商品 | 営業が提案に使う資料と事例を作る | その商品の提案から生まれた商談数 |
| 離れかけの顧客 | 以前買っていた商品に関わる案内をメールで送り、反応があった顧客を営業に渡す | 反応から生まれた商談数 |
上位顧客に話を聞くときは、取引額が大きく、取引が続いている顧客から選びます。何をどの順で聞くかは、ジョブ理論とN1分析|BtoBの受注の決め手(KBF)を戦略と施策に落とす にまとめています。
経営と営業に説明するときの一文
結果を伝えるときに、そのまま使える一文です。
- 経営に:「売上の柱は〇〇の顧客と△△の商品の組み合わせで、その売上の多くを数社が占めています。来期は似た会社を新しく狙い、入口になっている□□の訴求に予算を寄せます。」
- 営業に:「担当の顧客ごとに、次に提案できる商品と、声をかけてほしい顧客をまとめました。声をかけてほしい顧客は、マーケからの案内に反応があった会社です。」
まとめ
RFM分析とABC分析は、組み合わせて「どの顧客が、どの商品を買っているか」として読むと、判断に使える結果になります。経営には投資先と残す商品を、営業には提案先と声をかける顧客を、メンバーには組み合わせごとの施策と追う数字を渡します。結果は決まった報告の場で更新し、顧客の移り変わりで打ち手の効き目を確かめます。
よくある質問
Q1. 取引のある顧客が数十社しかなくても、RFM分析とABC分析は役に立ちますか?
A1. 役に立ちます。顧客が少ないほど、上位の数社に売上が偏りやすく、その偏りを示すだけでも経営の判断材料になります。ランクを細かく分けず、上位顧客と離れかけの顧客を見分けるところから始めます。
Q2. 営業が受注データを出してくれないときは、どうすればよいですか?
A2. 経理の請求データから始めます。顧客名・日付・金額・商品名がそろっていれば、分析はできます。そのうえで、結果を担当顧客ごとのリストにして営業に返すと、記録に協力してもらいやすくなります。
Q3. 分析の結果は、どのくらいの頻度で見直せばよいですか?
A3. 四半期ごとなど、経営への定期報告に合わせて見直します。BtoBは取引の間隔が長いため、毎月では顧客の移り変わりが見えにくくなります。見直す時期は、施策のマイルストーンに入れておきます。
Q4. RFM分析かABC分析のどちらか1つでは、足りませんか?
A4. 1つでも分析はできますが、判断に使うなら組み合わせます。ABC分析だけで売上の小さい商品を減らすと、その商品を買っている上位顧客を失うことがあります。顧客と商品を並べて見ると、残すもの、寄せるものの理由まで説明できます。
