マーケティング部の役割は誰が決める?|営業の下請けにしない、役割分担と組織図の決め方
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マーケティング部を作ったものの、営業から頼まれる作業に追われ、部の役割があいまいなままになることがあります。役割も組織の形も、経営陣から示されるのを待っていては決まりません。
この記事では、CMOやマーケ責任者が経営計画から部の役割を決め、役割分担と組織図に落とし、経営陣と営業の合意を取るまでの動き方を解説します。
- 部の役割と組織図を決める順番と、責任者が最初に動くこと
- 仕事の中身から、組織の形(営業部の中か、独立させるか)を選ぶ基準
- 組織案を経営陣や営業部長に出す前に、決めておくこと
マーケ人材の育成計画の全体の立て方は、マーケティング人材育成は『任せる順番』から|経験者が自分1人のチームで、1年で実務を手放す計画 で解説しています。
結論:組織図は最後に描く。役割は経営計画から、形は仕事の中身から決める
マーケティング部の役割を決めるのは、経営陣ではなく、CMOやマーケ部長など部の責任者です。経営陣が示すのはふつう会社全体の目標までで、マーケ部の役割やKPIまで落としてくれることは、会社の規模を問わず多くありません。だからこそ、責任者が自分から動き、次の順番で決めていきます。
- 中期経営計画と単年度計画から、部が担う数字(役割)を決める
- マーケティング戦略を立てて施策に落とし、仕事を書き出して分ける
- 仕事の中身を見て、組織の形を選ぶ
- メンバーのスキルを見て、仕事に人を置く
- 数字を経営陣の言葉に置き換えて、経営陣と営業部長の合意を取る
組織図は、この5つが決まった結果として描くものです。先に「営業部の中か、独立か」という形から考えると、部が何のためにあるのかが決まらないまま、箱だけができてしまいます。
形から決めると、営業の下請けになりやすい
営業は今期の受注、マーケは数年先の見込み客を見ている
営業部門との違いは、見ている時間の長さにもあります。営業が追うのは今期の受注で、マーケが追うのは半年から数年先の見込み客づくりです。部の役割を決めないまま営業部長の下に入ると、目の前の受注に役立つ作業が優先され、中長期の施策は後回しになります。
「リードの質が悪い」は、渡す条件を決める立場にないから起きる
営業からよく出る「マーケから来るリードは質が悪い」という声も、多くはここから生まれています。営業のいう「質が悪い」とは、渡された見込み客に予算や決裁の権限がない、検討がまだ先で商談にならない、といった状態のことです。
こうしたずれが起きるのは、どんな見込み客を営業に渡すかの条件を、マーケ部が営業と話し合って決める立場にないためです。条件がないまま、頼まれた展示会で集めた名刺や、件数の目標に合わせて集めたリードをそのまま渡す作業者に徹するしかなく、その結果、営業から見ると「質が悪い」リードになります。
ただし、これはマーケ部長と営業部長の関係性にもよります。形そのものより、役割と数字を先に決めて合意しているかどうかが分かれ目です。
責任者が動く5つの順番
1. 経営計画から、部が担う数字を決める
最初に、中期経営計画と単年度計画を読み、マーケ部の活動で動かせる数字を選びます。たとえば「新規顧客からの売上を3年で2倍」という目標があれば、マーケ部が担うのは新規の商談数です。「既存顧客の取引額を増やす」が目標なら、既存顧客への提案の機会をつくることが役割になります。
選んだ数字から、部のKPIと予算の案を出します。ここで大切なのは、経営計画のどの目標に効くのかを一緒に書くことです。部の役割は、「〇〇という経営目標のうち、〇〇の部分を担う」という1〜2文にまとめます。
2. 戦略を施策に落とし、仕事を2つの軸で分ける
部の数字が決まったら、マーケティング戦略を立て、施策に落とします。戦略が決まると、部がやるべき仕事(ジョブ)がはっきりします。この仕事を明確にすることこそ、CMOやマーケ部長の役目です。
書き出した仕事は、次の2つの軸で分けます。
- 営業を巻き込むか:展示会、見込み客の引き渡し、事例づくりのように営業などの他部署と連携する仕事か、Webサイトや広告のようにマーケ部だけで進められる仕事か
- 設計か、現場か:何をどう測るか、どの順番で進めるかを決める「設計の仕事」か、データを集める環境づくりや制作物づくり、運用などの「現場の仕事」か
マーケ部は、環境づくりや現状の把握、制作物づくりなど、現場の仕事が多い部門です。ただし、最初の設定がその後の成果を大きく左右するため、施策を始める前に必ず設計の仕事が発生します。役割分担では、この設計の仕事を誰が持つかを最初に決めてください。
書き出した例は、次のとおりです(従業員120名の製造業で、マーケ部3名を想定した架空の例)。
| 仕事 | 種類 | 営業を巻き込むか | 担当 |
|---|---|---|---|
| 部の数字と、施策の優先順位を決める | 設計 | 巻き込む(営業部長と合意) | 責任者 |
| 何をどう測るかを決め、計測の環境を整える | 設計 | マーケ部だけ | 責任者、分析担当 |
| 見込み客を営業に渡す条件を決める | 設計 | 巻き込む | 責任者 |
| 展示会・セミナーの企画と運営 | 現場 | 巻き込む | 施策担当 |
| 事例・営業資料の制作 | 現場 | 巻き込む | コンテンツ担当 |
| Webサイトの更新、広告、メール配信 | 現場 | マーケ部だけ | 施策担当 |
| 月次の集計と、報告資料の作成 | 現場 | マーケ部だけ | 分析担当 |
この表のうち、「営業を巻き込む仕事」がどれだけあるか、「設計の仕事」を誰が持てるかが、次の組織の形を選ぶ材料になります。
株式会社PLAN-Bが従業員10〜299名の中小企業のマーケティング担当者200名に行った調査(2025年3月)では、複数名の専任部署があると答えたのは38.0%でした。課題の上位は「人材・リソースの不足」42.0%、「マーケティング戦略の設計が不十分」38.5%、「専門知識・ノウハウの不足」37.0%です。
人手が限られる会社ほど、現場の仕事に追われて設計が後回しになります。表を作ると、その抜けが目に見えるようになります。
4. メンバーのスキルを見て、仕事に人を置く
仕事と組織の形が決まったら、メンバーを置きます。マーケは営業などに比べて門戸が狭い分野で、経験者が少なく、メンバーのスキルが仕事に追いついていないことがよくあります。組織をつくる前に、メンバーがいま何をできるのかを把握しておいてください。
スキルの書き出し方は、マーケターのスキルマップの作り方|「何ができれば一人前か」を職歴や資格ではなく行動で決める で、足りないスキルを研修で補うか社内で教えるかは、マーケティング研修か、社内OJTか|中小企業のマーケター育成で、無料セミナーと有料研修を使い分ける で解説しています。
発足したばかりのマーケ部は、「Webサイトのお守り役」と見られ、専門職として扱われないことも少なくありません。私は、産休の前後や時短勤務、休職明けの人ばかりがマーケ部に配属されている企業も見てきました。働き方が問題なのではなく、必要なスキルを見ずに配属が決まっていることが問題です。1の役割と2の仕事の表があれば、「この仕事には、このスキルを持つ人が必要です」と人事や経営陣に求められます。
社内に担える人がいない仕事が残った場合は、採用するか外注するかを判断します。
5. 数字を経営陣の言葉に置き換えて、合意を取る
最後に、ここまでの案を経営陣と営業部長に出し、合意を取ります。このとき、営業部門との「言葉の違い」が壁になります。マーケの担当者は専門分野を学びながら日々の仕事をしていて、営業や経営陣にとって聞き慣れない専門用語を、ふだんの言葉に言い換えるところまで手が回っていないのが実情です。人によっては、専門用語を使いたがることもあるかもしれません。
経営陣に理解してもらうには、マーケの数字を受注や利益の言葉に置き換えます(数字は架空の例)。
| マーケの言葉のまま | 経営陣に伝わる言葉 |
|---|---|
| 今月のリード獲得は300件、CVRは1.2%でした | 今月は新規の商談を20件つくりました。受注率20%なら4件、1件の粗利を150万円とすると、600万円の粗利が見込めます |
| MAでナーチャリングを強化したいです | 商談にならず止まっている見込み客400社に、月1回情報を届けます。そのうち2%が商談になれば、商談が月8件増えます |
| ブランドの認知を高めたいです | 展示会で名刺を交換した企業のうち、半年以内に問い合わせてくる割合を、いまの5%から10%に上げます |
数字をこのように置き換えるだけで、経営陣との話し合いは格段に進めやすくなります。反対に、話がかみ合わなければ予算はつきません。予算がつかなければ、マーケ部はコストセンター扱いのままで、人も施策も増やせないままです。利益の言葉で成果を出す方法は、マーケティングROIの出し方|「その広告費でいくら儲かった?」に答える、経営視点の計算3段階 で解説しています。
組織の形の使い分け
中小企業のマーケ部の形は、主に次の3つです。どれが正解かは、2で書き出した仕事の中身と、会社の状況で決まります。どの形を選んでも、右の列の「約束」を先に決めておかなければ、役割はまたあいまいになります。
| 組織の形 | 向いている場面 | どう使うか(先に決めておく約束) |
|---|---|---|
| 営業部の中のチーム | 事業や商品が1つで、営業を巻き込む仕事が多い。営業部長と、中長期の数字を共有できる関係にある | マーケの数字を営業の数字と分けて、経営会議に報告する場を持つ。営業からの依頼を受ける量の上限と、優先順位の決め方を営業部長と決める |
| 営業企画などと一体の部 | 責任者が営業企画や経営企画を兼務していて、数字の集計や予算管理をすでに担っている | 営業企画の集計業務と、マーケの設計の仕事を分けて書き出す。設計に使う時間を、先に週の予定に確保する |
| 社長直下の独立した部 | 事業や商品が複数あり、見込み客の数え方をそろえる必要がある。中期計画に新規顧客や新しい市場の目標がある | 現場から遠くなりやすいため、営業と共通で追う数字(商談化率など)と、見込み客を渡す条件を最初に合意する |
判断に迷ったら、「中長期の数字を、誰が経営会議で説明するか」で考えます。マーケ部の責任者が自分で説明できる形なら、営業部の中にあっても役割は保てます。営業部長を通さないと説明できない形なら、形を変えるか、報告の場を別に持つ約束が必要です。
組織をすぐ変えられないときに、状況別に責任者がまずやること
組織の形をすぐに変えられない会社も多いはずです。よくある状況ごとに、責任者がまずやることをまとめます。
| 状況 | まずやること |
|---|---|
| 営業部長の下に置かれることが、すでに決まっている | 形は変えずに、約束で役割を守る。経営計画から出した部の数字を、社長も入る場で営業部長と合意する。営業部長は「上司」である前に、共通の数字を追う相手として位置づける |
| 責任者が兼務で忙しく、設計の仕事に時間を割けない | 現場の仕事を先にメンバーへ手放し、設計の時間をつくる。手放す順番は、Untitled を参照する |
| 経営陣がマーケ部を「Webサイトの係」と見ている | 部の役割を1〜2文にし、経営計画のどの目標に効くかと一緒に示す。人の配置も、仕事の表をもとにスキルで求める |
| 事業や商品が増え、マーケへの依頼が集中している | 依頼の優先順位を「経営計画の数字にどれだけ効くか」で決めるルールを経営陣と合意する。見込み客の数え方が事業ごとにばらばらなら、独立した部への移行を検討する |
| 設計の仕事を担える人が、責任者以外にいない | 責任者が設計を持ち、現場の仕事は採用か外注で補う。 |
組織図に書き込む項目と、合意を取る順番
組織図には、所属と人数だけでなく、部の役割と数字まで書き込みます。役割が書かれていない組織図では、あとから依頼作業が流れ込んでも、断る根拠がないからです。書き込む項目と記入例は、次のとおりです(架空の例)。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 置く場所 | 社長直下。営業部と並べ、部長は経営会議で直接報告する |
| 部の役割 | 中期経営計画の「新規顧客からの売上を3年で2倍」のうち、新規の商談をつくる部分を担う |
| 担う数字 | 新規の商談数、マーケ経由の受注額 |
| 営業と共通の数字と、渡す条件 | 商談化率。渡すのは「従業員50名以上で、導入の時期が1年以内」の見込み客 |
| 担当する仕事 | 部長:数字と施策の優先順位、計測の設計、渡す条件(設計の仕事)/Aさん:展示会・セミナー、Webサイト、広告/Bさん:月次の集計と報告資料、事例・営業資料 |
| 報告と予算 | 経営会議で月1回、商談数・受注見込み・粗利見込みを報告。年間予算は施策別の内訳を添える |
合意は、相手と順番を決めて取りにいきます。私なら、まず社長(経営陣)と役割・数字・予算を合意し、そのあとで営業部長と共通の数字と渡す条件を合意します。営業部長のほうが社内で力を持っていることが多いため、経営陣と合意した数字を持って話すほうが、「営業の手伝い」に戻されにくいからです。担当する仕事と配置は、必要に応じて人事とも共有してください。
経営陣に説明するときの一文
組織案や部の役割を、経営会議で説明するときに使えます。
- 「マーケ部は、中期経営計画の『新規顧客からの売上』のうち、新規の商談をつくる部分を担います。今期は新規の商談を月○件つくり、そのうち○件の受注、粗利○万円を目標にします。」
- 「営業部とは、商談化率を共通の数字として追います。見込み客を渡す条件は営業部長と合意済みで、月に一度、両部で数字を確かめます。」
まとめ
- マーケティング部の役割は、経営陣を待たずに責任者が決めます。経営計画から担う数字を選び、組織図を描くのは最後です。
- 仕事を「営業を巻き込むか」「設計か現場か」で分け、組織の形は仕事の中身と「中長期の数字を誰が説明するか」で選びます。どの形でも、設計の仕事を誰が持つかを最初に決めることが前提です。
- 経営陣には、マーケの数字を受注や利益の言葉に置き換えて伝えます。話が通じなければ予算はつかず、コストセンター扱いのままです。
よくある質問
Q1.中小企業のマーケティング部の役割は何ですか?
A1.経営計画の目標のうち、マーケの活動で動かせる数字を担うことです。多くの場合は、見込み客をつくり、新規の商談や受注につなげる部分になります。何を担うかは会社ごとに違うため、責任者が経営計画から選び、経営陣と合意して決めてください。
Q2.マーケティング部は営業部の中に置くべきですか、独立させるべきですか?
A2.仕事の中身と、中長期の数字を誰が経営会議で説明するかで決めます。事業が1つで営業を巻き込む仕事が多ければ、営業部の中でも役割は保てます。事業が複数あり、見込み客の数え方をそろえる必要があるなら、向いているのは社長直下の独立した部です。
Q3.マーケティング部の組織図には、何を書けばよいですか?
A3.所属と人数に加えて、部の役割、担う数字、営業と共通で追う数字、各メンバーの担当する仕事を書きます。とくに、設計の仕事を誰が持つかを明記してください。役割が書かれていない組織図では、依頼作業を断る根拠がなくなります。
Q4.営業から「マーケのリードは質が悪い」と言われたら、どうすればよいですか?
A4.見込み客を営業に渡す条件を、営業と一緒に決め直します。この声の多くは、マーケ部が条件を決める立場になく、頼まれた作業をこなす役に徹していることから起きています。渡す条件と共通で追う数字を合意し、組織図や部の役割として文書に残してください。
Q5.CMOがいない会社では、誰がマーケティング部の役割を決めますか?
A5.マーケ部長や、マーケを兼務する責任者が決めます。肩書きがCMOかどうかより、経営計画を読んで部の数字と予算を出し、経営陣の合意を取りにいく人を決めておくことが大切です。
