経営ダッシュボードの作り方|載せる数字の選び方と、エクセルで1画面にまとめる5ステップ
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経営会議のたびに数字の説明に時間がかかり、報告の画面を作り直したいと考えることがあります。経営陣が見たいのは、予算や施策を決めるための数字と、目標に届きそうかどうかです。
この記事では、経営ダッシュボードに載せる数字の選び方と、エクセルなどの表計算ソフトで1画面にまとめる手順を解説します。
- 経営ダッシュボードの完成形と、載せる数字の選び方
- 見る人ごとに画面を分けるときの、数字の振り分け
- 表計算ソフトで経営ダッシュボードを作る5ステップと、つまずきやすい点
経営ダッシュボードは、決めることごとに数字を1つ選び、目標とのギャップを1画面に出す
経営ダッシュボードには、経営陣が決めることごとに数字を1つだけ選んで載せます。そのうえで、目標とのギャップと、今期末の着地予測(このままいくといくらで終わるか)を、画面の上に出します。
完成形は、たとえば次のようになります。数値は説明用の架空のもので、4月始まりの会社の12月時点の画面です。「マーケ経由」は、最初の接点が展示会・Web広告・自社サイト・メール・セミナーなどマーケの施策だった商談や受注を指します。
上段:目標に届きそうか
| 数字 | 目標 | 実績・見込み | ギャップ | 経営陣が決めること |
|---|---|---|---|---|
| 今期のマーケ経由の受注の着地予測 | 3,000万円 | 2,780万円 | −220万円 | 施策を足すか、目標を見直すか |
| 今月のパイプライン創出額(マーケ経由で新しく生まれた商談の金額) | 1,950万円 | 1,400万円 | −550万円 | 商談を増やす施策に予算を寄せるか |
| マーケ費用の消化率(12月時点) | 85% | 85% | ±0ポイント | 予算の配分を途中で変えるか |
下段:どこに原因があるか
| 数字 | 展示会 | Web広告 | 自社サイト | メール・セミナー | 経営陣が決めること |
|---|---|---|---|---|---|
| パイプライン創出額(今期累計、目標→実績) | 3,600万円→3,000万円 | 1,800万円→1,600万円 | 1,750万円→1,750万円 | 1,750万円→2,000万円 | どのチャネルが足りないか |
| 受注1件あたりの費用(CAC、人件費込み・今期累計) | ―(受注は1〜3月) | 150万円 | 93万円 | 121万円 | どのチャネルに予算を寄せるか |
CACは、外部に払う費用と人件費を合わせて出すのが基本です。期の途中は受注が費用より遅れて出るので、CACは高く出ます。期中は上段の着地予測とパイプライン創出額で判断し、CACは期末に、上限(1社あたりの年間粗利×取り返す年数)と比べます。画面の右下などには、前年度の回収期間と1年のROIを小さく置き、マーケ活動を投資として続けるかの判断材料にします。受注の件数がまだ少ないうちは、空欄のままでもかまいません。
上段で「目標に届きそうか」がわかり、届かないときは下段で「どのチャネルが原因か」をたどれます。数字ごとに「経営陣が決めること」を1行で書けないものは、載せません。
実施した施策に関するデータをすべて掲載しても、説明しきれません。場合によっては、大きく動いているグラフがあると、そこに注目が集まって脱線してしまいます。
見る人ごとに画面を分け、経営陣の画面には決めるための数字だけを置く
経営ダッシュボードから外した数字は、ほかの人が見る画面に回します。見る人ごとに画面を分けると、経営陣の画面は1枚に収まります。
| 見る人 | 使いみち | 見る頻度 | 主な数字 |
|---|---|---|---|
| 経営陣 | 投資を続けるか、どこに寄せるかを決める | 月次・四半期 | 受注の着地予測、パイプライン創出額、CAC、回収期間・ROI、予算の消化率 |
| マーケ責任者 | 商談の流れと予算を管理する | 週次・月次 | チャネル別のCAC・リード1件あたりの費用(CPL)、MQLから商談への転換率、予算の消化率 |
| 施策の担当(兼務なら自分) | 施策ごとの問題を見つけて直す | 日次・週次 | ページやフォームのCVR、広告のクリック率・CPA、メールの開封率・クリック率 |
| 営業との共有 | リードや商談の状態をそろえる | 日次 | 営業に渡したリードの数、商談の発生数、リードごとの最近の動き(営業の商談管理表で共有) |
経営陣の画面に置くのは、受注とお金に近い数字です。PVやCVR、広告のROASのように、施策を直すために見る数字は、施策の担当の画面に置きます。ROASは広告費に対する売上の割合で、利益が残ったかまではわかりません。
もう1つの注意は、リード、商談、受注のように段階の違う数字を、1件あたりの売上などで横に並べないことです。段階が進むほど件数は減るので、1件あたりの売上は後ろの段階ほど高く出ます。並べても、どちらがよいかの判断には使えません。段階の違う数字は、「リード→商談→受注」の流れと転換率で見せるようにします。
施策の担当の画面で、GA4から見る数字の絞り方は、GA4の見方|マーケ責任者が見るのは3つの画面だけ で解説しています。
経営会議で、RPL(リード1件あたりの売上)とRPO(商談1件あたりの売上)を比べられ、「RPOのほうが高くなるなら、マーケに投資する意味があるのか?」という議論になったことがあります。RPOが高くなるのはあたりまえなのですが、リードから商談、受注までの流れ(ファネルやパイプライン)が社内で意識されていないと、こうした比較から抜け出せず、議論は不毛なまま終わります。ダッシュボードを作る前に、どの段階をマーケが受け持ち、どこから営業が受け持つのか、マーケと営業の役割をそろえておくことが必要です。
経営ダッシュボードを作る5ステップ
エクセルやGoogleスプレッドシートなど、手元の表計算ソフトで作る手順です。BIツールがなくても作れます。
全体の流れは、決めることを書き出す → 数字と目標値を決める → 出どころと数え方を決める → 3枚のシートで作る → 会議で使い、使われない数字を消す、の5つです。
Step1:経営陣が決めることを書き出す
最初に、経営会議でマーケについて決めていることを4〜5つ書き出します。手元にある数字から選び始めると、判断に使わない数字まで載りやすくなるためです。
- 今期の目標に届きそうか。届かないなら、施策を足すか
- 商談が足りているか
- 予算の配分を途中で変えるか
- どのチャネルに予算を寄せるか
- マーケ活動を投資として続けるか、増やすか
Step2:決めることごとに、数字と目標値を1つずつ決める
書き出した決めることごとに、判断に使う数字を1つだけ選び、目標値を横に置きます。
| 決めること | 数字 | 目標値の出し方 |
|---|---|---|
| 今期の目標に届きそうか | 受注の着地予測 = 受注済みの金額 + 商談中の金額 × 受注率 + これからの商談の見込み × 受注率 | マーケ経由の受注の目標 |
| 商談が足りているか | パイプライン創出額 | 受注の目標 ÷ 受注率で出した商談数を、商談が生まれる月に割り振り、単価をかける |
| 予算の配分を途中で変えるか | マーケ費用の消化率 | その月までの予算の累計 ÷ 年間の予算 |
| どのチャネルに予算を寄せるか | チャネル別のCAC(人件費込み) | CACの上限(1社あたりの年間粗利×取り返す年数) |
| 投資として続けるか、増やすか | 回収期間(主)と1年のROI。どちらも人件費込み | 回収期間が、経営陣と決めた取り返す年数以内か |
完成形の例は、受注率を30%として計算しています。着地予測は、受注済み1,400万円+商談中4,600万円(10〜12月に生まれた商談)×30%で2,780万円です。商談から受注まで3か月かかるため、1月以降に生まれる商談は今期の受注に間に合わず、これからの商談の見込みは0円としています。
パイプライン創出額の目標は、受注の目標3,000万円から逆算した年間の商談42件(1億550万円)を、商談が生まれる月に割り振ったものです。12月は、展示会5件×300万円、Web広告1件×200万円、自社サイト1件×250万円で1,950万円になります。予算の消化率の目標は、12月までの予算の累計775万円÷年間の予算910万円で85%です。
受注の目標や受注率は、KPI目標値の決め方|売上目標から商談数・リード数を逆算し、根拠を説明する方法 の逆算で出したものがそのまま使えます。
ROIと回収期間には、マーケティングROIの出し方|「その広告費でいくら儲かった?」に答える、経営視点の計算3段階 の結果を入れましょう。
Step3:数字の出どころと数え方を1行ずつ決める
数字ごとに、どこから取るかと、何を1件と数えるかを1行で決め、画面の下に書いておきます。
| 数字 | 出どころ | 数え方の例 |
|---|---|---|
| 商談・受注の件数と金額 | 営業の商談管理表 | 営業が商談として表に載せ、金額と段階(商談中・受注・失注)を入れたもの |
| マーケ経由 | 営業の商談管理表(「きっかけ」の列) | 最初の接点が、展示会・Web広告・自社サイト・メール・セミナーなどマーケの施策だったもの |
| 費用 | 経理の数字 | 月ごと・チャネルごとの請求額 |
| 人件費 | 経理・財務と決めた時間単価×施策にかけた時間 | 年額を12か月に均等に置く |
営業の商談管理表に「きっかけ」(最初の接点になった施策)の列がなければ、営業に頼んで1列だけ足してもらいます。この列がないと、どの商談がマーケ経由なのかを数えられず、パイプライン創出額もチャネル別のCACも出せません。あわせて、金額と段階の列が毎月埋まっているかも確かめておきます。
- 商談と受注は、営業の商談管理表の数字を基準にします。GA4の問い合わせ数やセッション数で売上を語っても、経営陣の判断材料にはなりません。
- 売上と費用は、経理の数字に合わせておきます。私の経験では、部署での案分など社内の都合で数字が合わないことは多々あり、もめたら経理に従うことになりました。
- 人件費の出し方は会社によって違うので、経理・財務に必ず確認してください。
Step4:表計算ソフトで、3枚のシートを作る
シートを3枚に分けておけば、毎月の更新は「貼る・入れる」だけで済みます。
| シート | 中身 | 毎月の作業 |
|---|---|---|
| 受注データ | 営業の商談管理表の写し(商談名、会社名、きっかけのチャネル、発生日、金額、段階、受注日) | 毎月データを更新する |
| マーケ費用 | 月ごと・チャネルごとの外部に払う費用と人件費 | 毎月データを更新する |
| 画面 | 上段と下段の表、グラフ | 表示したい月を選択するだけ |
営業の商談管理表もGoogleスプレッドシートなら、IMPORTRANGE関数で営業の表を「受注データ」シートに読み込めば、貼り直しも要りません。
画面のシートの数字は、SUMIFS関数で「受注データ」シートから集計する形です。たとえば選んだ月のパイプライン創出額なら、発生日がその月で、きっかけのチャネルがマーケの施策である商談の金額を足し合わせます。
グラフは、数字の種類で使い分けます。
- 目標とのギャップ:グラフにせず、数字を大きく出す
- パイプライン創出額の推移:月ごとの棒グラフに、目標の線を重ねる
- チャネル別のCAC:横棒グラフで並べる
画面は、スクロールせずに見える範囲(印刷するならA4横1枚)に収めましょう。
この3枚のシートに、次の2つを加えておくと、初めての月から迷わず使えます。
- 定義:数字ごとの出どころと数え方の1行(Step3の表)
- 記入例:この記事の完成形の数値を入れた画面
Step5:経営会議で使い、使われない数字を消す
- 更新する人と日を決めます(例:毎月、経営会議の3営業日前までにマーケ責任者が更新する)。
- 会議では、上段の目標とのギャップから話し、届かない場合だけ下段の原因に進みます。
- 四半期に1回、会議で一度も話題にならなかった数字を画面から消します。
経営ダッシュボードでつまずきやすい点
| つまずき | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| PVやROASなど、施策を直すための数字を載せる | 数字の意味の説明に時間を取られる。ROASなどを見だして混乱して終わる | 施策の担当の画面に置く |
| 受注が月に数件なのに、月ごとの受注を大きく載せる | 数字がほとんど動かず、判断に使えない | 着地予測とパイプライン創出額を中心にし、受注とROIは半期・年で見る |
| マーケの成果が売上につながる前に、画面を作り込む | 最初だけダッシュボードにオーダーがあり、そのうち忘れられる | 商談につながった件数とパイプライン創出額から始め、受注が出はじめたら項目を増やす |
| 営業の商談管理表の書き方が人によってばらばらで、抜けが多い | 着地予測が信用されない | Step3の数え方を営業と合わせ、金額・段階・きっかけの列の抜けを月1回確認する |
経営陣に説明するときの一文
- 「この画面の上の3つで、今期の目標に届きそうかがわかります。届かないときは、下の表でどのチャネルが足りないかを見て、施策を決めていただきます。」
- 「商談と受注は営業の商談管理表、費用は経理の数字から取っています。毎月同じ形で更新します。」
まとめ
- 経営ダッシュボードは、経営陣が決めることごとに数字を1つ選び、目標とのギャップと着地予測を上に、チャネル別の原因を下に置きます。
- 見る人ごとに画面を分け、PVやROASなど施策を直すための数字は施策の担当の画面に回します。段階の違う数字は、横に並べて比べません。
- 作り方は、決めることを書き出す→数字と目標値を決める→出どころと数え方を決める→3枚のシートで作る→会議で使い、使われない数字を消す、の5ステップです。
よくある質問
Q1. 経営ダッシュボードとKPIダッシュボードは、何が違いますか
A1. この記事では、見る人で分けています。経営陣が投資を続けるか、どこに寄せるかを決める画面が経営ダッシュボード、担当者がKPIの進み具合を追う画面がKPIダッシュボードです。
Q2. 経営ダッシュボードの項目は、いくつが目安ですか
A2. 経営陣が決めることの数で決まります。この記事の例では、上段3つ、下段2つ、ROI・回収期間を1つとしました。決めることが書けない数字は、個数にかかわらず外します。
Q3. BIツールを使わないと、経営ダッシュボードは作れませんか
A3. 作れます。エクセルやGoogleスプレッドシートで、3枚のシートを作れば、毎月の更新は営業の商談管理表の貼り付けだけで済みます。更新の手間が増えてきたら、BIツールへの切り替えを考えます。
Q4. 回収期間が計算できない場合は、どうすればよいですか
A4. まずはチャネル別の費用(人件費込み)とCPLを載せます。受注が出はじめたら、CACと回収期間を加え、1社あたりの年間粗利×取り返す年数の上限と比べます。
