KPI目標値の決め方|売上目標から商談数・リード数を逆算し、根拠を説明する方法
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リード数や商談数の目標値を出したものの、経営会議で「その数字の根拠は?」と聞かれ、答えに詰まることがあります。求められているのは、売上目標を自社の実績の率で割り戻した、筋の通った数字です。
この記事では、売上目標から受注件数・商談数・リード数を逆算し、KPIの目標値を決める方法を解説します。
- 売上目標から商談数・リード数を逆算する計算式と、計算例
- 逆算に使う率を、自社の実績からどう決めるか(データがない場合も含む)
- 逆算した目標値が現実的かを判断する目安と、営業と決めておくこと
結論:目標値は「売上目標 ÷ 各段階の率」で逆算する
KPIの目標値は、売上目標のうちマーケ経由で作る分を平均受注単価で割って受注件数にし、そこから商談、MQL、リードへと各段階の率で割り戻して出します。
| 出したい数字 | 計算式 |
|---|---|
| マーケ経由の売上目標 | 全社の売上目標 × マーケ経由の割合 |
| 必要な受注件数 | マーケ経由の売上目標 ÷ 平均受注単価 |
| 必要な商談数 | 受注件数 ÷ 受注率 |
| 必要なMQL数 | 商談数 ÷ MQL→商談の率 |
| 必要なリード数 | MQL数 ÷ MQL化率 |
MQLは、マーケが獲得したリード(見込み客)のうち、条件を満たして営業に渡すリードのことです。リードから商談になる割合(商談化率)は、MQL化率とMQL→商談の率を掛けたものにあたります。
マーケ経由の割合は、全社の売上目標から、既存顧客から見込む分と、紹介や営業の開拓で見込む分を除いた残りが、全体の何%かで経営と決めます。
式そのものは単純なので、根拠として問われるのは、式に入れる率と単価のほうです。目標値に根拠を持たせるには、次の3点を押さえます。
- 売上目標の全体ではなく、マーケ経由の割合の分だけを逆算する
- 率と単価は、自社の直近12か月の実績から、件数を合計して出す。受注率は、決着した商談(受注+失注)だけで出す
- 受注までのリードタイムの分だけ、リードの目標を前の月にずらす
よくある失敗:キリのいい数字と、3つの数字だけの逆算
目標値の決め方で、私がよく見る失敗は2つあります。
1つめは、リード数を「月100件」のようなキリのいい数字で決めてしまうことです。受注目標から割り戻していないので、根拠を聞かれても答えられません。しかも、100件を達成しても受注目標に届くかどうかは、誰にもわからない状態になります。
2つめは、リード数・商談数・受注数の3つだけで判断することです。この場合、リードから商談までの間が見えません。資料をダウンロードしただけの人も、展示会で名刺を交換した人も、同じ1件のリードとして数えるため、商談化率が月ごとに大きくぶれます。率がぶれれば、それで割り戻した目標値も根拠になりません。だからこそ、リードと商談の間にMQLの段階を置き、営業に渡した数を別に数えておきます。
もう1つ注意したいのが、売上目標の全体をそのまま受注単価で割る計算です。既存顧客からのリピートや追加の発注まで新規のリードで作る計算になり、必要なリード数が大きく出すぎてしまいます。
計算例:部品メーカーの来期目標を逆算する
ここでは、次の架空の会社で計算します(数値は説明のための例です)。
- 業種:製造業(産業機械の部品メーカー)、従業員100名
- 来期の売上目標:15億円。マーケ経由の割合は2%(既存顧客と、紹介・営業の開拓で見込む分を除いた残りから、経営と決めた)
- 新規顧客の平均受注単価(初回の受注):250万円
- 直近12か月の実績:MQL化率37%、MQL→商談の率40%、受注率29%(受注12件÷決着した商談42件)
- 問い合わせから受注までの平均:4か月
年間の目標値を出す
| 段階 | 計算 | 年間の目標値 | 月あたり |
|---|---|---|---|
| マーケ経由の売上目標 | 15億円 × 2% | 3,000万円 | ― |
| 受注件数 | 3,000万円 ÷ 250万円 | 12件 | 1件 |
| 商談数 | 12件 ÷ 29% | 42件 | 4件 |
| MQL数 | 42件 ÷ 40% | 105件 | 9件 |
| リード数 | 105件 ÷ 37% | 284件 | 24件 |
この記事では、件数は目標に届くよう、段階ごとに小数点以下を切り上げています(月あたりの数も同じです)。
売上目標の15億円をそのまま250万円で割ると600件になり、必要なリード数は約1万4,000件という現実的でない数字になります。マーケ経由の分だけを割り出すことで、目標値の大きさがまったく変わることがわかります。
余裕を持たせる
率は時期によってぶれるため、平均の率だけで計算すると、率が下がった時期に目標に届きません。私は、余裕を持たせるときは、実績のうち低かった時期の率を使います。
ただし、月ごとの率は使いません。この会社のマーケ経由の商談は月3〜4件なので、受注が1件違うだけで、その月の受注率は25ポイント以上動きます。最も低かった月は、実力が落ちた月というより、たまたま件数が偏った月であることが多いからです。そこで、四半期(3か月)ごとに件数を合計して率を出し、そのうち最も低い四半期の率を使います。この会社では、MQL化率が四半期ごとに30〜50%の間で動いていました。
また、すべての段階を最も低い率にすると、必要な数が積み上がって大きくなりすぎます。悪い時期がすべての段階で同時に重なることはまれなので、ぶれが大きい段階だけを低い率にするのが現実的です。
| 計算のしかた | 使う率(MQL化率/MQL→商談の率/受注率) | 必要なリード数(年間) | 月あたり |
|---|---|---|---|
| 12か月の合計から出した率 | 37%/40%/29% | 284件 | 24件 |
| ぶれが大きいMQL化率だけ、最も低い四半期の率 | 30%/40%/29% | 350件 | 30件 |
| すべての段階を、最も低い四半期の率 | 30%/37%/13% | 840件 | 70件 |
この例では、月24件を「見込み」、MQL化率だけを低くした月30件を「目標」として示すと、幅のある根拠として説明できます。
リードタイムの分だけ前にずらす
問い合わせから受注まで平均4か月かかる場合、来期の最初の4か月の受注は、今期中に獲得したリードで決まります。そのため、来期のリード目標は、来期の後半から翌期の初めの受注に向けた数字として置きます。月別の目標を作るときは、受注の月から4か月前にずらしてリードを割り振ってください。
自社に当てはめる手順
Step1:マーケ経由の割合を経営と決める
営業や経理と一緒に、売上目標のうち既存顧客から見込める分を出します。前年の取引実績と、契約の更新予定をもとにすると根拠を示しやすくなります。続いて、新規顧客のうち紹介や営業の開拓で見込める分も営業と一緒に出します。残りが全社の売上目標の何%かを、マーケ経由の割合として経営と決めます。
Step2:各段階の数え方を営業とそろえる
率を出す前に、何を1件と数えるかを営業と決めておきます。定義があいまいなまま率を出すと、同じ「MQL→商談の率」でも人によって違う数字になってしまいます。
| 段階 | 数え方の例 |
|---|---|
| リード | 問い合わせ、資料ダウンロード、展示会の名刺など、連絡先がわかる見込み客 |
| MQL | 従業員数や業種が対象に合い、具体的な相談がある、または料金ページを見たなど、営業に渡す条件を満たしたリード |
| 商談 | 営業が面談し、課題と予算、導入の時期を聞けたもの |
| 受注 | 契約または発注書を受け取ったもの |
Step3:直近12か月の実績から、件数を合計して率と単価を出す
CRMやエクセルの記録から、段階ごとの率と、新規顧客の初回の受注単価を出します。どの期間のデータを使うかは、次の3つの条件で決めます。
| 条件 | 理由 | 決め方 |
|---|---|---|
| 1年分の季節を含む | 繁忙期や決算期で、率が変わるため | 原則は直近12か月。数年分あれば、同じ時期どうしも比べる |
| 率の分母の件数が足りる | 件数が少ないと、率が偶然で大きく動くため | 分母(受注率なら決着した商談数)が少なくとも30件、できれば100件になるまで期間を延ばす |
| 今のやり方と条件が同じ | 商材、価格、営業体制が変わると、率も変わるため | 大きな変更があった場合は、変更後のデータだけを使う |
条件がぶつかる場合、たとえば半年前に営業体制が変わった場合は、変更後の半年分で率を出し、仮の率として四半期ごとに見直します。あわせて、次の3点にも気をつけてください。
- 率は、月ごとの率を平均せず、期間の件数を合計してから割って出す
- 受注率は、決着した商談(受注+失注)だけで出す。まだ結果が出ていない最近の商談を分母に入れると、受注率が低く出すぎる
- 外れ値は、数字の大きさではなく理由で除く(1件だけの大型案件、展示会で一度に集めた名刺など)。率が低い月を外すと、目標値が甘くなる
100件あっても、幅は上下に8〜10ポイントほど残ります。率は1つの正しい数字ではなく、幅のある目安として扱うのが安全です。
自社のデータがまったくない場合は、業界の水準を仮の率として置きます。業界の水準の見方はBtoBの商談化率・受注率の平均は?自社の数字が良いか悪いかを判断する で解説しています。仮の率で始めたら、段階ごとの件数を毎月記録し、分母が30件ほどたまった段階から自社の率に置き換えましょう。
Step4:リードタイムを営業に聞き、月別に割り振る
問い合わせから受注までの期間は、営業の担当者に聞くのがいちばん確実です。CRMに記録があれば平均も出せますが、商材や顧客の規模によって期間が違うことも多いため、営業の感覚と合っているかを確かめてください。そのうえで、受注の月からリードタイムの分だけ前にずらして、月別のリード目標を置きます。
Step5:余裕の持たせ方を決める
段階ごとに四半期ごとの率を並べ、ぶれが大きい段階だけ最も低い四半期の率で計算し直します。四半期でも分母が30件に届かない段階は、差の多くが偶然なので、12か月の率を使います。
判断の目安:逆算した目標値は現実的か
逆算した月あたりのリード数を、過去の実績と比べます。比べる相手は1つの平均ではなく、次の3つの数字です。
- 直近12か月の月平均:季節の波をならした、ふだんの水準
- 直近3か月の月平均:いまの勢い(増えているか、減っているか)
- 直近12か月で最も多かった四半期の月平均:これまでに出せた最も高い水準
12か月の月平均と直近3か月の月平均のうち、低いほうを「基準」にします。直近で数が落ちているのに1年の平均と比べると、実際より楽な判断になってしまうからです。
| 必要なリード数(月あたり) | 判断 | 次にやること |
|---|---|---|
| 基準以下 | 今の施策の延長で届く | 月次で率の変化を追い、ずれたら早めに手を打つ |
| 基準を超え、最も多かった四半期の水準以内 | 過去に出せた水準なので、届く可能性はある | 最も多かった時期に何をしていたかを調べ、同じ施策を計画に入れる |
| 最も多かった四半期の水準を超える | これまで一度も出せていない水準 | 施策の追加だけでなく、率の改善や、受注単価・マーケ経由の割合・目標そのものを経営陣と話し合う |
季節の波が大きい会社は、年間でならさず、月別の目標を前年の同じ月の実績と比べてください。
率が変わると、必要なリード数はどう変わるか
数が足りないときは、リードを増やすより率を上げるほうが効くことがあります。計算例の会社で、MQL→商談の率と受注率が変わったときに必要なリード数(年間)を表にすると、次のとおりです(受注12件、MQL化率37%のままで計算)。
| MQL→商談の率\受注率 | 24% | 29% | 34% |
|---|---|---|---|
| 30% | 452件 | 379件 | 325件 |
| 40% | 338件 | 284件(今の実績) | 244件 |
| 50% | 271件 | 228件 | 195件 |
MQL→商談の率が40%から50%に上がると、必要なリードは284件から228件に減ります。反対に30%まで下がると379件になり、3割以上多く集めなければなりません。受注率が5ポイント下がった場合も、必要なリードは338件に増えます。
この表は、経営会議でそのまま見せられます。「リードを増やす」「MQL→商談の率を上げる」「受注率を上げる」のうち、どれが目標への近道かを数字で比べられるからです。スプレッドシートで作っておけば、率を入れ替えるだけで何度でも試せます。
そしてMQL→商談の率を左右するのは、マーケだけでなく、リードを受け取った営業の動き方です。
MQL→商談の率を上げるには、営業との受け渡しを先に決める
目標値を確定する前に、マーケから営業へのリードの受け渡し方を、営業と打ち合わせて決めておきます。MQL→商談の率はリードの質だけでなく、営業がいつ、どう連絡したかで大きく変わるからです。取り決めがないまま目標値だけを置くと、率が下がったときに、原因がリードにあるのか対応にあるのかを切り分けられません。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 営業に渡すリードの条件 | Step2で決めたMQLの条件 |
| 連絡するまでの期限 | 受け取ってから2営業日以内 |
| 結果の返し方 | 商談にならなかった理由を、CRMに選択式で記録する |
| 見直しの場 | 月に1回、MQL→商談の率と理由の内訳を一緒に見る |
営業に渡すリードの条件や、連絡までの期限、結果の返し方をマーケと営業の間で約束することを、SLA(サービスレベル合意)と呼びます。もとはサービスの品質を契約で約束する言葉で、マーケと営業の連携でも同じ呼び方が使われています。
もっとも、営業は目の前の案件で忙しく、頼むだけではなかなか協力してもらえません。そこで私は、取り決めを守ると営業の仕事がどう変わるかを、近い将来の姿として見せるようにしています。
- リードの行動(どのページや資料を見たか)が記録され、受注しやすい顧客の勝ちパターンが見えてくる
- 商談の前に相手の情報がたまっているので、ヒアリングの時間が短くなる
- 相手の関心や予算感を事前につかめるので、合わない相手との商談を減らせる
- 商談の前に準備ができ、初回から話がかみ合いやすくなる
合意した商談数やMQL→商談の率は、営業側の目標にもつなげておくと、取り決めが守られやすくなります。部門のKPIを、個人の目標(MBOなど)にどう落とすかまで話しておくと、なおよいでしょう。なお、リード数は達成しているのに受注が増えない場合の直し方は、「問い合わせ数」KPIの失敗例|KGIとつなぐKPI再設計 で解説しています。
経営陣に説明するときの一文
- 「来期の売上目標15億円のうち、マーケ経由で2%にあたる3,000万円を作ります。平均受注単価250万円で12件の受注にあたります。過去1年の受注率29%、MQL→商談の率40%、MQL化率37%から逆算すると、必要なリードは月24件です。」
- 「MQL化率は四半期ごとに30〜50%とぶれるため、最も低かった30%でも届くよう、リードの目標は月30件に置いています。」
まとめ
- KPIの目標値は、売上目標×マーケ経由の割合を平均受注単価で割って受注件数にし、受注率・MQL→商談の率・MQL化率で割り戻して出す。
- 逆算するのは、売上目標のうちマーケ経由の割合の分だけ。既存顧客や紹介・営業の開拓の分まで含めると、必要な数が大きくなりすぎる。
- 率と単価は、自社の直近12か月の実績から、件数を合計して出す。受注率は決着した商談だけで出す。分母が30件に届かなければ期間を延ばし、データがなければ業界の水準を仮に置く。
- 余裕は、ぶれが大きい段階だけ、最も低い四半期の率で持たせる。受注までのリードタイムの分だけ、リードの目標は前にずらす。
- 目標値は、12か月と直近3か月の実績のうち低いほうと、最も多かった四半期の水準の両方と比べて判断する。
- MQL→商談の率を上げるために、リードの受け渡しの条件と期限を、目標値を決める前に営業と合意しておく。
よくある質問
Q1.売上目標からリード数を逆算する計算式は?
A1.売上目標にマーケ経由の割合をかけてマーケ経由の売上目標を出し、平均受注単価で割って受注件数にします。そこから受注率、MQL→商談の率、MQL化率の順に割り戻します。たとえば受注12件、受注率29%、MQL→商談の率40%、MQL化率37%なら、必要なリードは年間284件(月あたり24件)です。
Q2.過去のデータがない場合、率はどう決めればよいですか?
A2.業界の水準を仮の率として置き、まずは目標値を出します。そのうえで、リード・MQL・商談・受注の数を毎月記録し、率の分母が30件ほどたまった段階から自社の率に置き換えます。仮の率で出した目標値だと、経営陣にも先に伝えておきましょう。
Q3.率が月によって大きくぶれる場合は、どの値を使いますか?
A3.月ごとの率ではなく、四半期ごとに件数を合計して率を出します。12か月の合計から出した率で「見込み」を、ぶれが大きい段階だけ最も低い四半期の率に替えて「目標」を出し、2つを並べて示してください。すべての段階を最も低い率にすると、必要な数が積み上がって現実的でなくなるため避けます。
Q4.逆算したリード数が、これまでの実績よりかなり多い場合はどうしますか?
A4.直近12か月で最も多かった四半期の水準も超えるなら、リードを増やす前に前提を見直します。受注単価やマーケ経由の割合、目標そのものを経営陣と話し合い、あわせてMQL→商談の率を上げる手を考えるのが先です。営業との受け渡しの取り決めでこの率が上がれば、必要なリード数は大きく減ります。
