マーケティング費用の内訳と出し方|工数・ツール費・イベント費の明細を根拠のある金額にする
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来期の予算案で費用を積み上げても、明細の1行ごとに「この金額はどこから出したのか」と聞かれて詰まることがあります。積み上げはどの会社もしていますが、差がつくのは明細の金額の出し方です。
この記事では、マーケティング費用の内訳ごとに、根拠のある金額を出す方法を解説します。
- マーケティング費用の内訳と、費目ごとの金額の根拠の取り方
- 普段は管理していない社内工数を、人件費として計算する方法
- ツール代などのランニングコストを、複数年で示すときの考え方
施策ごとの額をまだ決めていない場合は、先にマーケティング予算配分はどこに厚くする?防衛と攻撃の分け方と、導入期・成長期・安定期の比率 で配分を決めておくと、明細の合計と比べて過不足を確かめられます。
マーケティング費用は「根拠を書いた明細」の合計で出す
マーケティング費用の総額は、次の式で出します。
マーケティング費用の総額 = 外に払う費用(広告費+外注費+ツール費+イベント費)+ 社内の人件費(工数 × 時間単価)
式そのものは単純で、合計を出すのは難しくありません。問題になるのは、明細の1行ずつの金額です。前年の金額をそのまま写した行や、ツールの月額に12をかけただけの行は、値上げやイベントの中止があれば来期の実際の費用と合わなくなります。また、社内の工数は明細に入れていない会社が多く、実際にかかっている費用より総額が小さく見えてしまいます。
予算の明細は、多くの会社で会計年度にあわせて1年分で作ります。つまり明細の金額は来期に実際に払う額であり、前年の金額ではなく、来期の契約条件や開催予定で出し直す必要があります。
| 費目 | 主な中身 | 金額の根拠にするもの | よくある雑な出し方 |
|---|---|---|---|
| 広告費 | Web広告、業界誌への広告 | 受注目標から逆算した必要リード数 × リード1件あたりの獲得費用 | 前年と同じ額 |
| 外注費 | 記事・動画の制作、広告運用の代行、デザイン | 既存:契約書と来期の更新条件/新規:見積もり | ネットで見た相場 |
| ツール費 | MA・CRM、Webサイトのサーバー・保守 | 既存:来期の価格・プラン・課金単位/新規:見積もり | 今の月額 × 12か月 |
| イベント費 | 展示会の出展料・装飾・ノベルティ、セミナーの会場費 | 主催者の来期の出展案内、会場の見積もり | 前年の実績額 |
| 人件費(社内工数) | マーケ担当者、兼務者、営業などの協力時間 | 工数 × 時間単価(出し方は経理・財務と決める) | 入れない |
明細の金額でつまずきやすい3つの費目
社内工数:記録していないと、どの施策に何時間かかっているかわからない
いちばんつまずくのが、社内工数です。普段から工数を管理していない会社では、どの施策にどれだけ時間を使っているかを誰も把握していません。そのため明細に入らず、見えないコストのまま残ります。
工数は、次の順番で出します。
- 施策ごとの作業を書き出す(例:ウェビナーなら、企画、資料作成、集客メール、当日の運営、フォローの連絡)
- 2〜4週間だけ、作業ごとの時間を記録する。記録がない過去の分は、カレンダーの予定から拾う
- 施策ごとに、1回あたり(または1か月あたり)の時間にならす
- 来期の実施回数をかけて、年間の工数にする
見落としやすいのは、マーケ担当者以外の時間です。展示会に立ち会う営業、ウェビナーに登壇する技術者、事例記事の取材を受ける担当者の時間も、施策にかかっているコストです。兼務の責任者は、自分の時間のうちマーケに使っている割合(例:3割)で数えます。
| 施策 | 1回あたりの工数 | 来期の回数 | 年間の工数 | うち他部署の協力 |
|---|---|---|---|---|
| ウェビナー | 30時間 | 4回 | 120時間 | 登壇者 1回4時間 |
| 展示会 | 120時間 | 1回 | 120時間 | 営業の立ち会い 1回40時間 |
| 事例記事 | 12時間 | 6本 | 72時間 | 取材対応 1本2時間 |
| メルマガ | 6時間 | 24回 | 144時間 | ― |
(数値は説明のための例です)
外注費・ツール費:既存は契約条件の変更を、新規は見積もりを確かめる
外注費とツール費は、既存の契約と新規の契約で確かめることが違います。
既存の契約で確かめること
- 値上げの予定はないか(更新時の単価改定、価格表の改定)
- プランや機能が変わっていないか(使っている機能が上位プランに移る、オプションが有料になる)
- 課金の単位が増えないか(MAのコンタクト数、CRMのユーザー数が上限を超える)
- 外貨建てのツールは、為替で円の金額が変わらないか
- 契約の更新月はいつか(期の途中で更新なら、更新後の金額で月数を分けて計算する)
これらは、予算案を作る前にベンダーや代理店に問い合わせて確認します。「来期も同じ条件で続けられますか」と聞くだけで、明細の金額の確かさが変わります。
新規の契約で確かめること
- 見積もりを取る。ネットの相場や、営業担当者から聞いた口頭の金額で明細を作らない
- 相見積もりを取る。2〜3社から取り、金額と作業の範囲を並べて比べる
- 値引きの余地を聞く。年払い、複数年契約、導入の時期で金額が変わることがある
値引きは、書面で確定するまで明細に入れません。明細は値引き前の見積額で作り、値引きの見込みは「交渉中:〇万円下がる可能性あり」と別に書いておきます。値引きを前提に予算を組むと、交渉がまとまらなかったときに足りなくなるからです。
イベント費:来期も開催されるか、内容が変わっていないかを確かめる
展示会やセミナーの費用は、前年の実績額をそのまま使いがちです。ただ、イベントは毎年同じとは限りません。明細に入れる前に、次の点を確かめます。
- 来期も開催されるか(隔年開催、休止、別の展示会との統合)
- 会期や会場が変わっていないか(会場が変わると、装飾や輸送の費用も変わる)
- 出展料や小間の区分が改定されていないか
- 自社の出し方を変えないか(小間の大きさ、ノベルティ、人員)
主催者の来期の出展案内が出ていれば、その金額を使います。まだ出ていない場合は、前回の実績額を仮の金額として置き、「来期の出展案内が出たら確定」と明細に書いておきます。
人件費は、会社ごとの出し方を経理・財務に確認してから計算する
工数を金額にするときは、時間単価をかけます。
人件費 = 工数 × 時間単価時間単価 = 1人あたりの年間の人件費 ÷ 年間の労働時間
ここで必ず押さえておきたいのは、人件費の出し方が会社によって違うことです。私が予算づくりでくり返し伝えているのも、この点です。計算する前に、経理・財務の担当者に、自社ではどう出すのかを聞いておいてください。確かめるのは、次の3つです。
| 確かめること | 会社によって違う点 |
|---|---|
| 人件費に何を含めるか | 給与だけか、賞与を含むか、社会保険料などの法定福利費まで含むか |
| 時間単価をどう決めるか | 個人ごとの給与から出すか、会社が決めた標準の単価(社内単価)を使うか |
| 年間の労働時間を何時間とするか | 所定の労働時間か、残業を含めるか |
自分で給与から計算した単価と、経理が使っている単価が違うと、予算案を出したあとで数字を疑われます。個人の給与が見えてしまう出し方を避けるため、部門共通の標準単価を使っている会社もあります。自社の決まりに合わせるのがいちばん確実です。
予算案には、外部に払う費用と人件費を別の行で書き、合計も示すのが基本です。人件費を外すと、施策にかかっている実際の費用より総額が小さく見えてしまいます。
厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」では、会社が負担する労働費用の総額は常用労働者1人1か月平均408,140円で、そのうち給与・賞与(現金給与額)は82.0%でした。残りの18.0%は、法定福利費や退職給付などの費用です。企業規模30〜99人では、給与・賞与が83.1%、100〜299人では82.8%です。
給与だけで計算するか、法定福利費まで含めるかで、人件費は2割ほど変わります。どちらを使うかも、経理・財務と決めておきます。
人件費を含めたROIの出し方は、マーケティングROIの出し方|「その広告費でいくら儲かった?」に答える、経営視点の計算3段階 で解説しています。
ランニングコストは、複数年の表を補足につける
予算の明細は単年で作りますが、ツール費やWebサイトの保守費のように、毎年続けてかかる費用もあります。こうしたランニングコストは、単年の明細だけだと説明しにくくなります。1年目は初期費用が乗って高く見え、2年目以降にいくらかかるかは明細からわからないからです。そこで、単年の明細とは別に、複数年の表を補足として付けることをおすすめします。
複数年の総額 = 初期費用 +(年間のランニングコスト + 年間の運用工数 × 時間単価)× 年数
Webサイトを180万円で改修し、保守費が年36万円、更新作業の工数が年72時間(月6時間)かかる場合で、3年分を出してみます(数値は説明のための例です。時間単価は、経理と決めた3,000円とします)。
| 項目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 3年間の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 初期費用(改修) | 180万円 | ― | ― | 180万円 |
| サーバー・保守費 | 36万円 | 36万円 | 36万円 | 108万円 |
| 更新作業の工数(年72時間 × 3,000円) | 21.6万円 | 21.6万円 | 21.6万円 | 64.8万円 |
| 合計 | 237.6万円 | 57.6万円 | 57.6万円 | 352.8万円 |
3年間の合計は352.8万円で、1年あたりにすると117.6万円です。「1年目は237.6万円かかりますが、2年目からは年57.6万円で運用できます」と示せば、初年度の金額だけで判断されるのを防げます。反対に、2年目以降の費用を書いておかないと、翌年の予算案で「こんなにかかるとは聞いていない」と言われかねません。
複数年の表を付けるかどうかは、次を目安にします。
| 費用の状況 | 付けるかどうか | 理由 |
|---|---|---|
| 初期費用が大きい新規の導入(ツール、サイトの改修) | 付ける | 1年目だけ高く見えるため |
| 複数年契約で値引きがある | 付ける | 単年契約と複数年契約を総額で比べるため |
| 既存のツールを同じ条件で続ける | 付けなくてよい | 値上げの有無だけを明細に書けば足りる |
| 単発の広告やイベント | 付けない | 翌年に続けてかかる費用ではないため |
判断の目安:明細の1行ごとに「根拠」と「状態」が書けているか
明細の良し悪しは、総額の大きさではなく、1行ごとに根拠と状態が書けているかで判断します。
| 状態 | 意味 | 予算案での扱い |
|---|---|---|
| 確定 | 契約書、改定の通知、条件変更なしの確認がある | そのまま使う |
| 見積もり | 見積書がある(交渉中を含む) | 見積額で入れ、値引きの見込みは別に書く |
| 計画 | 自社の実績と目標から計算した | 計算の前提(件数、単価、時間)を書く |
| 仮 | 前年の実績や情報が出ていない | いつ確定するかを書き、確定したら差し替える |
次のどれかにあてはまる行があれば、予算案を出す前に直します。
- 根拠の欄が「前年と同じ」「相場」だけになっている
- 既存のツールや外注先に、来期の条件を確かめていない
- 来期の開催を確かめていないイベントがある
- 社内工数を入れていない、または人件費の出し方を経理・財務と決めていない
仮の行が残るのは問題ありません。仮であることと、確定する時期が書いてあれば、期の途中で差し替えても説明がつきます。
経営陣や経理に説明するときの一文
- 「明細は、既存の契約は来期の条件を確認した金額、新規は見積もりの金額で作っています。来期の出展案内が出ていない展示会だけが仮の金額です。」
- 「人件費は経理と決めた単価で出し、外に払う費用とは別の行に分けたうえで、合計も示しています。」
まとめ
- マーケティング費用の総額は、外に払う費用(広告費・外注費・ツール費・イベント費)と社内の人件費の合計で出す。差がつくのは、明細の1行ずつの金額の出し方。
- 社内工数は、施策ごとに作業を書き出し、短い期間だけ記録して年間の時間にする。他部署の協力時間も含める。
- 外注費・ツール費は、既存なら値上げ・プラン変更・課金単位の増加を確かめ、新規なら見積もりと相見積もりを取る。値引きは確定するまで明細に入れない。
- イベント費は、来期も開催されるか、内容や出展料が変わっていないかを確かめる。
- 人件費は会社によって出し方が違うので、計算する前に必ず経理・財務に確認する。
- ランニングコストは、単年の明細とは別に、複数年の表を補足として付ける。
よくある質問
Q1.マーケティング費用の内訳には、何を入れればよいですか?
A1.広告費、外注費、ツール費、イベント費の外に払う費用と、社内の人件費を入れるのが基本です。人件費は見落とされやすいのですが、施策にかかっている実際の費用を示すには欠かせません。予算案では、外に払う費用と人件費を別の行に書き、合計も示すと、決裁者が会社として出ていく総額をつかめます。
Q2.社内の工数を記録したことがありません。どう見積もればよいですか?
A2.施策ごとに作業を書き出し、2〜4週間だけ作業時間を記録して、1回あたりの時間にならします。記録がない過去の分は、カレンダーの予定から拾えます。最初は粗くてもかまわないので、来期の実績でならし直す前提で数字を置いてください。
Q3.マーケティングの人件費は、給与だけで計算すればよいですか?
A3.会社によって出し方が違うため、先に経理・財務に確認します。給与だけで出す会社もあれば、賞与や法定福利費まで含めたり、会社が決めた標準の単価を使ったりする会社もあります。法定福利費などを含めると、給与・賞与だけの場合より2割ほど高くなります。
Q4.ツールのランニングコストは、予算案にどう書けばよいですか?
A4.単年の明細には来期に払う金額を書き、初期費用が大きい導入では、3年分などの複数年の表を補足として付けます。複数年の表には、ツールの利用料だけでなく、運用にかかる社内工数も入れます。2年目以降の費用を先に示しておくと、翌年の予算案でも説明が食い違いません。
