MKTG.AX
メニュー

マーケティング予算配分はどこに厚くする?防衛と攻撃の分け方と、導入期・成長期・安定期の比率

coconecococonecoLead Manager

公開日: / 更新日:

目次

総額の目安が見えて施策ごとの割り振りに入ると、どこに厚くすべきか迷うことがあります。決裁者が確かめたいのは、配分が前年の延長ではなく、今の受注を守りながら次の成長に備えた形になっているかです。

この記事では、防衛と攻撃の分け方と費目ごとの比率の決め方から、マーケティング予算配分の考え方を解説します。

👉この記事でわかること
  • 中期の段階(導入期・成長期・安定期)ごとの、防衛と攻撃の配分比率の目安
  • 受注1件あたりの費用で厚くする施策を選び、防衛を先に確保する手順と計算例
  • 広告費・外注費・ツール費から社内の工数まで、費目ごとの比率の決め方

予算案全体の作り方は、マーケ予算案の作り方|来期の準備は何から?予算資料の8項目と作る順番 で解説しています。

マーケティング予算配分は、中期の段階で比率を決めてから、施策ごとの実績で割り振る

特にBtoBのマーケ施策は、1年で成果が出きるものばかりではありません。展示会で名刺を交換した企業が2年後に発注することもあれば、コンテンツが1年かけて検索から商談を生むこともあります。だからこそ、予算配分は単年ではなく、3年ほどの中期で考えます。

配分は、次の順で決めます。

  1. 中期の段階から、防衛と攻撃の比率を決める:自社のマーケが導入期・成長期・安定期のどこにいるかで、比率の目安を置く
  2. 受注1件あたりの費用で、厚くする施策を選ぶ:今期の実績から、同じ額でより多くの受注につながっている施策を確かめる
  3. 防衛を先に確保し、残りを攻撃に回す:今の受注を支える施策の額を先に決め、新しい施策は小さく試す枠にする

ここでいう防衛は、今の受注を支えている施策です。攻撃は、新しい顧客や市場を取りに行く施策を指します。攻撃で成果が出た施策は、翌年から防衛に移して額を増やします。

私自身、中期の比率を先に決めておけば、毎年の配分をもっと早く組めたと感じています。段階ごとの比率が決まっていれば、配分の大枠は「来期はどの段階か」を確かめるだけで決まります。そのぶん、施策ごとの額や費用の積み上げ、撤退基準づくりといった後の作業に早く取りかかれます。

マーケティング予算配分でよくある3つの失敗

私がこれまで見てきた予算配分の失敗は、ほぼ次の3つに集まります。しかも、どれか1つではなく、3つが重なっている予算案も珍しくありません。

前年の配分比率をそのまま使い、理由を説明できない

前年の比率に「今年は1割増」を掛けただけの配分です。前年の実績を出発点にすること自体は問題ありません。困るのは、なぜその比率なのかを作った本人が説明できないまま、経営会議に出してしまうことです。前任者から引き継いだ配分表で、理由を書く欄が空いていることもよくあります(引き継ぎ資料に「なぜ」が残らないのは、マーケに限った話ではない気配もありますが)。

新しい施策に寄せすぎて、受注を支える施策を削る

「来期こそ新しいことを」と攻撃に予算を寄せ、その分を今の受注を支えている施策から削るケースです。新しい施策が商談を生むまでには時間がかかるので、削った施策の分の受注が先に減ります。その結果、期の途中で「予算を増やしたのに受注が減った」と説明する羽目になります。

声の大きい施策に予算が寄る

営業から強く要望された展示会や、経営陣が気に入っている施策に、成果の確認より先に予算が付くケースです。社内の関係を考えると断りにくいのが現実でしょう。ただ、配分の理由をあとから付けようとすると、説明はどうしても苦しくなります。こうした施策こそ、ほかの施策と同じ物差しで比べてから額を決めます。

3つに共通するのは、配分を決める物差しがないことです。次の章からは、その物差しを、中期の段階と施策ごとの実績で作る方法を説明します。

中期の段階ごとのマーケティング予算配分の使い分け

防衛と攻撃の比率は、自社のマーケがどの段階にいるかで変わります。次の表は、段階ごとの比率の目安と、攻撃の枠の使い方です。比率は計画の出発点にするための目安なので、業種や目標に合わせて調整してください。

段階自社の状態防衛:攻撃攻撃の枠の使い方翌年に向けて確かめること
導入期マーケ施策からの受注がまだ少なく、紹介や営業の開拓が中心5:53〜4つの施策を少額ずつ試し、商談につながるものを探す商談が出た施策を1〜2つに絞れたか
成長期受注につながる施策が1〜2つ見えてきた7:3成果が出た施策を防衛に移して増額し、攻撃は次の候補を1〜2つ試す増額した施策で、受注1件あたりの費用が上がりすぎていないか
安定期主な施策が固まり、同じ施策では受注の伸びが鈍ってきた6:4新しい業種・地域・商材など、次の市場を試す次の市場で商談が出始めたか

導入期でも防衛が5割あるのは、マーケ施策の実績が少なくても、既存顧客へのフォローやWebサイト、CRMの維持など、今の受注を支える費用がかかるためです。

段階を見分けるときは、新規受注のうち、マーケ施策から生まれた受注が何割あるかを目安にします。1割に満たなければ導入期、1〜3割あって伸びているなら成長期、割合が伸びなくなっていれば安定期と考えると判断しやすくなります。

中期計画があるなら、3年分の段階と比率を先に置いておきましょう。たとえば「来期は導入期で5:5、再来期は成長期に入り7:3」と決めておけば、攻撃で試した施策をいつ防衛に移すかも、あわせて説明できます。

できれば、この3年分の段階と比率は、中期計画を立てる時点で経営陣と合意しておいてください。大枠の合意があれば、毎年の予算案では配分の考え方から説明し直す必要がなく、施策ごとの額と実績の確認に議論を絞れます。

マーケティング予算配分を決める手順と計算例

ここからは、次の架空の会社で手順を説明します(数値は説明のための例です)。

  • 会社:製造業(産業機械向けの部品メーカー)、従業員100名、売上15億円
  • 来期のマーケ予算:外部に払う費用1,000万円(今期は910万円)と人件費391万円、合計1,391万円
  • 段階:成長期(今期はマーケ施策からの受注が、新規受注57件のうち11件と2割近くになり、伸びてきた)

Step1:中期の段階から、防衛と攻撃の比率を置く

成長期なので、防衛:攻撃は7:3を出発点にします。今期に試した新しい業種向けの広告が止める基準をクリアし、来期は通年に広げるため、攻撃を少し厚くして6.5:3.5とします。外部に払う費用1,000万円を分けると、防衛が650万円、攻撃が350万円です。施策の見積もりに合わせて、防衛を655万円、攻撃を345万円とします。この時点では、施策ごとの額はまだ決めません。

人件費391万円は人の数で決まる費用なので、比率の計算には入れず、別の行で示します。施策ごとの人件費は、施策にかける時間の比で配ります。

Step2:今期の実績から、施策ごとの受注1件あたりの費用を比べる

次に、今期の施策ごとに、受注1件あたりの費用を出します。この例では、費用に外部に払う費用と人件費の両方を含めています。人件費は、マーケの人件費370万円を、施策にかけた時間の比で配ったものです。

受注1件あたりの費用 =(施策の外部費用 + 人件費)÷ その施策から生まれた受注件数

リード1件あたりの費用(CPA)で比べると、商談や受注につながりにくいリードを多く集めた施策が良く見えてしまいます。配分を決めるときは、受注まで追った数字で比べてください。

施策外部費用人件費費用合計今期の受注受注1件あたりの費用
展示会(年1回)280万円60万円340万円新規3社113万円
リスティング広告240万円24万円264万円新規2社132万円
新しい業種向けの広告とLP(7〜12月の試行)90万円15万円105万円新規0社―(試行中)
記事・事例・ホワイトペーパーの制作120万円56万円176万円新規3社59万円
ウェビナー(年4回)60万円60万円120万円新規3社40万円
MAツール・サイトの保守(固定費)120万円155万円275万円――
合計910万円370万円1,280万円新規11社116万円

受注1件あたりの費用の上限は、1社あたりの年間粗利100万円×経営陣と決めた取り返す年数1.5年=150万円です。受注のある施策は、どれも上限の内側です。

展示会のように受注まで時間がかかる施策は、今期の受注だけで見ると不利になります。前期の出展で出会い、今期に受注した企業も含めて、2年分で見てください。それでも差が大きければ、額を減らす候補になります。

施策ごとに「なぜこの施策か」を説明する根拠の組み立て方は、【D-01:予算の根拠はどう説明する?】で解説しています。

Step3:防衛の枠を、受注を支える施策に先に割り振る

Step2の比較をもとに、防衛の655万円を割り振ります。ツール費やサイトの保守費は毎年かかる固定費なので、最初に確保しておきます。

施策来期の額決め方
MAツール84万円固定費として最初に確保
自社サイトの保守・サーバー36万円固定費として最初に確保
リスティング広告240万円受注1件あたり132万円と展示会より高い。額は今期並みにし、キーワードと広告文を対象の規模に絞る
展示会(年1回)295万円受注1件あたり113万円で上限の内側なので続ける。MQLへの連絡を2営業日以内にするルールを営業と決め、装飾の見直しで15万円増
合計655万円

額を据え置く施策があるときは、営業にも先に理由を伝えておきます。受注1件あたりの費用という同じ物差しで比べた結果だと示せば、声の大きさで配分が決まる状態から抜け出せます。

Step4:攻撃の枠を、上限と止める基準を決めて割り振る

残りの345万円を攻撃に回します。今期に受注1件あたりの費用が低かった記事・事例とウェビナーも、来期は事例を8本に、ウェビナーを年5回に増やすなど、中身を広げます。広げた分の成果が見えるまでは、攻撃の枠に置きます。攻撃の施策は成果の見込みが読めないため、施策ごとに上限額と、続けるか止めるかを判断する時期を決めておきます。

施策来期の額判断する時期と基準
記事・事例・ホワイトペーパーの制作(外注)150万円上期でリード30件・商談4件に届かなければ、下期の本数を減らす
ウェビナー(年4回から5回へ)75万円上期(4〜9月)で商談5件に届かなければ、下期は止める
新しい業種向けのリスティング広告とLP(通年)120万円9月末までにリード8件・商談1件に届かなければ止める
合計345万円

止めた施策の残りの額は、ほかの攻撃に回すか、使わずに残すかを経営陣と決めておきます。成果が出た施策は、再来期の配分で防衛に移します。

費目ごとの比率の決め方:外に払う費用と、社内の工数

施策ごとの額が決まったら、その中の費目の内訳と、社内の工数も割り振ります。広告の出稿費は、マーケ予算の一部にすぎません。

📌参考:広告予算がマーケ予算の30%未満の企業は59.2%

IDEATECH「2024年版 BtoB広告施策の定点調査」(BtoB企業の広告担当者130名、2024年8月30日実施)では、マーケティング予算に占める広告予算の割合は「10%未満」20.8%、「10〜20%未満」19.2%、「20〜30%未満」19.2%で、合わせて59.2%が30%未満でした。

費目ごとに、防衛と攻撃のどちらに入れるか、比率をどう決めるかは次のとおりです。

費目防衛・攻撃のどちらに入れるか比率の決め方
広告の出稿費施策に合わせる必要な受注数と、受注1件あたりの費用から逆算する
外注費(運用代行・支援・制作)頼む施策と同じ側出稿費に対する手数料率や月額を、見積もりで確かめる
展示会・イベント費前年に商談が出ていれば防衛出展料だけでなく、ブースの制作費や移動費も含める
ツール費(MA・CRMなど)防衛(固定費)年額で先に確保し、配分を考える対象から外す
コンテンツの制作費既存資料の更新は防衛、新しいテーマは攻撃施策の数ではなく、複数の施策で使い回せる本数で決める
社内の工数施策ごとに時間で割り振る攻撃に使える時間から、攻撃の施策の数を決める

とくに見落としやすいのが、社内の工数です。マーケを兼務している場合、使える時間は限られています。攻撃の施策は立ち上げに防衛の施策より時間がかかるので、攻撃にかけられる時間が週に数時間しかないなら、攻撃の施策は1つに絞ってください。お金を割り振っても、動かす人の時間がなければ、施策は期末まで手つかずのまま残ります。

費目ごとの相場は、広告費の相場は売上の何%?代行手数料やコンサル費まで含めた、中小企業のマーケ予算の目安 で紹介しています。

状況ごとのマーケティング予算配分の判断

総額の増減や社内の事情によって、配分の直し方は変わります。よくある状況ごとの判断は、次のとおりです。

状況判断
総額が前年より減った攻撃の枠から減らす。防衛を減らすときは、受注1件あたりの費用が高い施策から削る
総額が前年より増えた増えた分は、まず成果が出た施策の増額に回し、段階の比率に収まっているかを確かめる
施策ごとの受注件数を追えていない防衛は前年並みにとどめ、攻撃の一部を、CRMで施策ごとの受注を記録する仕組みづくりに回す
営業や経営陣から、特定の施策の要望がある受注1件あたりの費用で比べる。実績がなければ攻撃の枠に入れ、判断する時期を決める
期の途中で削減を求められた攻撃のうち、成果の出ていない施策から止める。防衛は最後に手を付ける

代理店や支援会社に予算配分を相談する前に決めておくこと

配分を代理店や支援会社に相談するときも、配分の判断は自社で持ちます。外部に頼むのは、決めた枠の中での実行です。相談の前に、次の3つを決めておいてください。

  • 中期の段階と、防衛・攻撃の比率
  • 防衛として残す施策と、それぞれの額
  • 攻撃の施策ごとの上限額と、止める基準

これが決まっていないまま相談すると、代理店が得意な施策に配分が寄りやすくなります。

経営陣に説明するときの一文

  • 「来期は外部に払う費用1,000万円と人件費391万円の、合わせて1,391万円です。外部に払う費用は、今の受注を支える施策に655万円、新しい顧客を取りに行く施策に345万円を配分しました。今の受注を支える施策は、今期の受注1件あたりの費用(人件費込み)で比べて額を決めています。」
  • 「攻撃に回す345万円は、施策ごとに上限と止める時期を決めています。成果が出た施策は、再来期から受注を支える側に移して増額します。」

まとめ

  • マーケティング予算配分は単年ではなく中期で考え、導入期・成長期・安定期の段階ごとに、防衛と攻撃の比率を先に決めておく。
  • 施策ごとの額は、リード1件あたりではなく受注1件あたりの費用で比べて決める。受注まで時間がかかる施策は2年分で見る。
  • 防衛を先に確保し、残りを攻撃に回す。攻撃の施策には上限額と止める基準を付け、成果が出たら翌年から防衛に移す。
  • 費目は、外に払う費用だけでなく社内の工数まで割り振り、攻撃に使える時間から施策の数を決める。

よくある質問

Q1.防衛と攻撃の比率は、何対何が正解ですか?

A1.決まった正解はなく、自社のマーケがどの段階にいるかで変えます。この記事では、導入期は5:5、成長期は7:3、安定期は6:4を出発点の目安にしています。目安を置いたうえで、今期の実績に合わせて調整してください。

Q2.前年の配分をもとに考えるのは、良くないことですか?

A2.前年の実績を出発点にすること自体は問題ありません。問題は、前年の比率をそのまま使い、なぜその比率なのかを説明できないことです。前年の配分は、施策ごとの受注1件あたりの費用を比べる材料として使い、来期の配分は段階の比率から組み直します。

Q3.ブランディングのように、受注に直結しない施策はどう配分すればよいですか?

A3.受注1件あたりの費用で比べられない施策は、攻撃の枠に入れて扱います。そのうえで、指名検索の数や問い合わせの数など、確かめる数字と判断する時期を先に決めておきます。目的の違う施策を同じ物差しで比べようとしないことがポイントです。

Q4.施策ごとの受注件数がわかりません。どう配分すればよいですか?

A4.来期は防衛を前年並みにとどめ、攻撃の一部を、施策ごとの受注を記録する仕組みづくりに回します。CRMの商談にリードの流入元を残しておけば、半年ほどで施策ごとの受注1件あたりの費用を出せるようになります。数字がそろった時点で、配分を見直してください。

Q5.展示会のように、受注まで時間がかかる施策はどう評価しますか?

A5.今期の受注だけでなく、前期の出展で出会って今期に受注した企業も含め、2年分で受注1件あたりの費用を出します。展示会は名刺交換から発注まで1年以上かかることも多く、単年で見ると不利になるためです。2年分で見ても差が大きい場合は、出展の回数を絞る候補にします。

この記事の執筆者

coconeco
coconecoLead Manager

デジタルマーケティング立ち上げ・運用設計責任者

この執筆者の記事・資料一覧を見る →

ご要望・ご質問

取り上げてほしいテーマや、使い方の質問を。

記事・資料・分析ツールへのご要望やご質問を受け付けています。いただいた内容は、今後のコンテンツづくりの参考にします。

  • こんなテーマの記事や資料を読みたい
  • 分析ツールの使い方・入力のしかたがわからない
  • 資料の記入例や、記事の内容についてもっと知りたい
要望・質問を送る