マーケ予算案の作り方|来期の準備は何から?予算資料の8項目と作る順番
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来期の予算の準備に入る時期になると、マーケ予算案を何から作ればよいか迷うことがあります。決裁者が見たいのは施策の一覧ではなく、会社の目標に対して、なぜこの額が必要なのかがわかる資料です。
この記事では、マーケ予算案の資料に入れる項目と、作る順番を解説します。
- 決裁者が確かめる、マーケ予算案の8つの項目(予算資料の骨子)
- 今期の振り返りから稟議・根回しまで、予算案を作る順番
- 予算案がつまずきやすい点と、予算枠を示されたときの判断
予算の内訳については、マーケティング費用の内訳と出し方|工数・ツール費・イベント費の明細を根拠のある金額にする を参考にしてください。
マーケ予算案は、会社の目標から根拠を組み立て、財務と数字を揃えて作る
予算案は、「いくら使いたいか」ではなく「会社の目標に対して、なぜこの額が必要か」を示す資料です。そのため、施策の一覧や前年の数字から書き始めず、今期の振り返りと会社の目標を起点に組み立てます。前年の実績は、出した額が大きく外れていないかを確かめる材料として使ってください。
私が予算案で大事にしているのは、即席の知識で作らないことと、予算を使うための数字合わせにしないことです。計算の前提を自社の実績から取り、経理・財務の担当者の助言を受けながら組み立てた予算案は、決裁者に根拠を聞かれても説明が崩れません。
マーケ予算案の資料に入れる8つの項目
予算資料の骨子は、次の8項目です。決裁者はこの順に読み、それぞれの項目で右の列のことを確かめます。
| 項目 | 書くこと | 決裁者が確かめること |
|---|---|---|
| 1. サマリー | 必要額、目的、見込む成果を数行で | 結論が一目でわかるか |
| 2. 今期の振り返り | 今期の予算と実績(予実)、得られた成果 | 前回の予算が約束どおり使われ、成果が出たか |
| 3. 来期の目標と予算の根拠 | 会社の目標とのつながり。なぜ今、なぜこの額、なぜこの施策か | 会社の目標に対して必要な投資か |
| 4. 総額と妥当性 | 予算の総額(外部に払う費用・人件費・合計)と、目標から逆算した必要額、CACの上限・回収期間との比較 | かけた費用を、決めた年数で取り返せるか |
| 5. 施策ごとの配分 | 今の受注を守る施策と、新しく取りに行く施策への割り振り | 実績のある施策に厚くなっているか |
| 6. 費用の内訳 | 広告費・ツール費に加え、社内の工数や維持費 | 見落としている費用がないか |
| 7. うまくいかない場合の備え | 撤退基準、段階的な執行、3つのシナリオ | 失敗したときの損失が限られているか |
| 8. 承認後の報告の約束 | 予実を報告する時期と形 | 期中に状況をつかめるか |
サマリーは資料の最初に置きますが、書くのは最後です。2〜8を作ってから、その結論を数行にまとめます。
マーケ予算案を作る順番
作る順番は、資料の並びと少し違います。経理・財務と今期の数字を揃えるところから始め、稟議書にまとめたあと、決裁会議までに根回しをします。
Step1:経理・財務と、今期の予実を揃える
最初に、経理・財務の担当者と今期の予算と実績を突き合わせます。マーケ費用にどの勘定科目を含めるか、粗利率はどの数字を使うか、マーケ担当者や協力する営業の人件費をどう出すか(時間単価と時間)も、この段階で揃えておきます。ここで揃えた定義は、期末の効果測定やROIの計算でもそのまま使えます。予算と成果を同じ物差しで比べられるため、次の予算案の根拠にもなります。
Step2:会社の目標に紐づけて、予算の根拠を組み立てる
次に、会社の目標のうち、マーケが担う分を切り出します。決裁者が判断に使うのは、CVRやリード数といったマーケの指標ではなく、売上や受注といった会社の目標と、そこにつながる各部門のKPIです。「なぜ今か」「なぜこの額か」「なぜこの施策か」の3つに、会社の目標の言葉で答えられるようにしておきます。
参考記事:予算の根拠はどう説明する?決裁者が見る「なぜ今・なぜこの額・なぜこの施策」の組み立て方
Step3:予算の総額の目安を出す
総額の目安は、2つの数字で確かめて決めます。1つは、Step2の目標から逆算した必要額です。もう1つは、受注1件あたりの費用(CAC)の上限です。上限は、1社あたりの年間粗利に、経営陣と決めた取り返す年数をかけて出します。人件費を含めた総額を受注件数で割ったCACが上限を超えるなら、目標が高すぎないか、施策の組み合わせに無理がないかを確かめてください。
CACの上限と回収期間の出し方は、新規1社にいくらまでかけてよいか|BtoBのCAC回収期間とLTVを粗利で出し、「何年で取り返すか」を経営と決める で解説しています。
Step4:総額を施策に配分する
総額が見えてきたら、施策ごとに割り振ります。基本は、今の受注を支えている施策(防衛)と、新しい顧客や市場を取りに行く施策(攻撃)に分け、防衛を先に確保することです。実績のない施策は、小さく試す枠にとどめます。
参考記事:マーケティング予算配分はどこに厚くする?防衛と攻撃の分け方と、導入期・成長期・安定期の比率
Step5:施策ごとの費用を積み上げ、総額を確かめる
配分した額で施策を実行できるかを、費用の積み上げで確かめます。広告費やツール代だけでなく、コンテンツ制作やデータ整備にかかる社内の工数、ツールやWebサイトの維持費も含めてください。見えない費用を落とすと、期中に予算が足りなくなり、追加の申請が必要になります。積み上げた額がStep3の総額と合わないときは、配分か総額のどちらかを直します。
参考記事:新規1社にいくらまでかけてよいか|BtoBのCAC回収期間とLTVを粗利で出し、「何年で取り返すか」を経営と決める
Step6:うまくいかなかった場合の備えを示す
数字がそろったら、決裁者の目線で予算案の弱い部分を点検します。新しい施策には、どの数字を下回ったら止めるかという撤退基準と、小さく始めて成果を見ながら増やす段階的な執行が必要です。あわせて、商談化率と受注率を2割下げた悲観・今期の実績の標準・2割上げた楽観の3つのシナリオで、受注と回収期間を示せば、決裁者は悪いときの数字を確かめたうえで判断できます。
参考記事:マーケ施策の撤退基準とシナリオの立て方|いつ・何件で止めるかを決め、最悪の損失を予算案に書く
Step7:予算案を稟議書にまとめる
ここまでの内容を、稟議書の形にまとめます。冒頭に必要額・目的・見込む成果のサマリーを置き、本文を施策の説明ではなく投資としての説明にするのがポイントです。数字だけを並べず、今期の振り返りから来期の目標へつながる流れで書くと、決裁者が読み進めやすくなります。
Step8:決裁会議の前に根回しをする
稟議を出す日が決まったら、決裁会議までの段取りを組みます。決裁者には事前に1対1で要点を伝え、懸念を聞いておくことが大切です。財務・IT・法務など、承認に意見を出す部門にも先に説明しておくと、会議の場で初めて反対が出ることを防げます。
マーケ予算案でよくあるつまずき
与えられた予算枠を、使い切る前提で計画してしまう
先に予算枠が示され、それを埋めるように施策を並べてしまうケースです。枠に合わせて作った計画では、期末に「その施策で何が増えたのか」と聞かれても答えられません。枠を示されたときも、目標から必要額を出してから、枠と比べて判断します。
| 必要額と枠の関係 | 判断 |
|---|---|
| 必要額が枠より少ない | 必要額で申請し、残りは使わない |
| 必要額が枠とほぼ同じ | 枠の範囲で申請する |
| 必要額が枠より多い | 目標を下げるか、枠を増やすかを経営陣に選んでもらう |
必要額が枠より少ないときに残した予算は、次の予算申請での信用につながります。必要額が多いときは、足りない額によって届かなくなる受注の件数を示すと、経営陣が判断しやすくなります。
ネットの基準値を、そのまま予算額の根拠にする
「マーケ予算は売上の〇%」という数字を、そのまま予算額の根拠にしてしまうケースです。出典や定義がはっきりしない数字は、決裁者や経理に「どこの数字か」と聞かれた時点で説明が崩れます。自社にデータがなく仮の値として使うときも、公的統計のように出典と定義がはっきりした数字を選び、仮であることを予算案に明記してください。
計算の前提を書かずに、予算の合計額だけを出す
合計額だけの予算案では、期中に実績とずれたとき、どこがずれたのかがわかりません。商談化率やリード1件あたりの獲得費用などの前提を書いておけば、「商談化率が想定より低い」のように原因を特定でき、配分を直せます。予算を使うための数字合わせではなく、あとで見直せる計画にするために、前提は必ず予算案に残してください。
経営陣への説明で、すぐに答えられるようにしておく2つのこと
経営陣に予算案を説明するとき、私が重要だと考えているのは次の2点です。どちらも資料に書くだけでなく、聞かれたらその場で答えられるように準備しておきます。
- サマリー:必要額・目的・見込む成果を、一文で言えるようにしておく。
例:「来期のマーケ予算は外部に払う費用910万円で、人件費370万円を合わせて1,280万円です。会社の受注目標から逆算した額で、マーケ経由で新規12社・3,000万円の受注を見込み、かけた費用は12.8か月で取り返せます。」 - うまくいかない場合の備え:撤退基準とシナリオを、すぐに示せるようにしておく。
例:「新しい業種向けの広告は90万円のうち、まず60万円を使い、9月末にリード5件に届かなければ止めます。新しい施策がすべて外れても、成果の出ない施策に使うのは150万円までです。」
まとめ
- マーケ予算案は、会社の目標に対して、なぜこの額が必要かを示す資料。8つの項目で組み立てる。
- 最初に経理・財務と、今期の予実と数字の出し方を揃え、予算の根拠を会社の目標に紐づける。
- 総額は目標から逆算した必要額で出し、人件費込みのCACが上限以内かと、配分と費用の積み上げで確かめる。
- 撤退基準と3つのシナリオで備えを示し、稟議書にまとめたら、決裁会議の前に根回しをする。
- 予算枠を使い切る前提の計画や、出典のない基準値に頼った予算案にしない。
よくある質問
Q1.マーケ予算は、売上の何%が目安ですか?
A1.売上の比率から予算額を決めるのはおすすめしません。予算額は会社の目標から必要額を出し、人件費を含めた受注1件あたりの費用(CAC)が、1社あたりの年間粗利×取り返す年数の上限以内に収まるかで確かめます。
参考記事:新規1社にいくらまでかけてよいか|BtoBのCAC回収期間とLTVを粗利で出し、「何年で取り返すか」を経営と決める
Q2.過去のデータがなく、根拠にできる数字がありません。どうすればよいですか?
A2.出典と定義がはっきりした数字を仮の値として置き、仮であることを予算案に明記します。そのうえで、期の途中で実績がたまったら自社の数字に置き換え、予算を見直してください。見直す時期を最初の予算案で示しておくと、承認を得やすくなります。
Q3.社長から先に予算枠を示されたら、どうすればよいですか?
A3.枠に合わせて施策を並べるのではなく、会社の目標から必要額を出してから枠と比べます。必要額が枠より少なければ必要額で申請し、多ければ目標を下げるか枠を増やすかを経営陣に選んでもらいます。どちらの場合も、差額で受注がどれだけ変わるかを示すのがポイントです。
Q4.予算案の準備は、いつから始めればよいですか?
A4.決裁会議の日から逆算して始めます。今期の予実を財務と揃える時間と、稟議を出したあとに根回しをする時間が必要になるためです。会議の日程が決まった時点で、Step1に取りかかるのが目安です。
Q5.マーケ担当者の人件費は、予算案に含めるべきですか?
A5.含めるのが基本です。予算案には、外部に払う費用と人件費を別の行で書き、合計も示します。決裁者が見ているのは会社として出ていく総額で、ROIやCAC、回収期間も、この合計で出すと実態に近くなるためです。人件費の時間単価や配り方は会社によって違うので、先に経理・財務と決めておきます。
